此所は『テカルタ王国』内にある『王立テカルタ貴族学院』。
 私、『シャンティーヌ・モリガン』がこれから通う学院だ。
 私は由緒ある公爵家に生まれ幼い頃にこの国の王太子様の婚約者となり王妃教育を受けてきた。
 この学院での目標は王太子妃に相応しい結果を出す事。
 私は決意を固めて学院の門をくぐろうとした。
 が、その瞬間、突然私の脳内にある映像が飛び込んできた。

『シャンティーヌ・モリガン! 君との婚約を破棄するっ!』

 婚約破棄?

『お前みたいな奴は我が家の恥だっ! 今日限りで勘当だっ!』

 勘当?

 次々と映像が飛び込んでくる。
 そして、最後に出てきた映像は小さな部屋にボロボロになった私がベッドで虚ろな目から涙を流しながらそのまま・・・・・・。

「い、いやああああぁぁぁぁっっっっ!!」

 私は悲鳴をあげて学院とは逆方向に走っていた。
 何か声も聞こえたけどそんな物は気にもならなかった。
 私は全力でその場から逃げ出したかった。
 気がつけば私は公園のベンチに座っていた。
 時計を見れば既に入学式は始まっている頃。
 冷静になって自分がとんでもない事をしてしまった、と気づいた。
「きっとお父様は怒ってらっしゃるでしょうね・・・・・・」
 何よりも面子を大事にするお父様ですから知ったら烈火の如く怒るでしょう。
 あの映像でも怒ってましたし・・・・・・。
 しかし、あの映像はなんだったのかしら・・・・・・。
 あのまま入学していたらああいう事になっていたのかしら?
 なぜ、このタイミングだったのか?
 しかし、私はあの映像が自分の身に起こる事、と理解した。
 何故か? それはわからないけど勘だと思う。
 あの門を潜る時がターニングポイントだったんだ、と思う。
 ぐ~、とお腹がなった。
「・・・・・・とりあえず何か食べましょう」
 私はベンチから立ち上がって公園内の売店でサンドイッチとジュースを購入、先程のベンチに座り食べ始めた。
「そういえば・・・・・・、こうしてのんびりと過ごすのも久しぶりだわ」
 王太子様の婚約者になってからは毎日王宮に通い勉強の日々。
 家に帰っても貴族としてのマナーや知識を叩き込まれ自由な時間なんて無かった。
 それがいつからか当たり前だと思っていた。
「・・・・・・よくよく考えたら私の味方ていなかったわね」
 両親は勿論の事、何故かわからないけど妹や弟は甘やかされていた様な気がする。
 そして、私の事を小馬鹿にしてきた。
 王太子様もそうだ。
 初めて会った時に『お前が俺の婚約者? 随分と地味な奴だな』と上から目線で言われ最悪だった。
 それからも付き合いはあった物の性格は変わらず。
 最近では他の令嬢を口説いているらしい。
 ・・・・・・今、考えたら私の人生て周りに引っ張られているわね。
 そう思ったらもうどうでも良くなった。
 婚約破棄? どうぞ喜んでお受け致します。
 勘当? 捨てるのは私の方、私の人生に貴方達なんていらない。
「このまま、何処か知らない土地にでも行ってのんびりと暮らすのも悪くないわね」
 私の決意は固まった。
 今日限りで公爵令嬢は辞めた。
 私は一人の女性として生きていく事を決意した。