君と6ヵ月の恋を

俺はただ茫然と目の前に起きている事を見ている事しか出来なかった。
まだ21歳なのに……
頭の中に同じ言葉が何回も繰り返される。
「あと、6ヶ月だと思います……」
 俺の人生はあと6ヶ月。医者から告げられた言葉は胸を刺すような痛みをともなう。
悔しさのあまり、部屋の壁を拳で叩く。

小さいころから弱かった。
だんだんと学校にも行けなくなった。
病気だからじゃなく、友達が作れなくて。
少しでも強く見せたくて髪を染めたら、誰も近寄らなくなった。

高校を中退して、途方に暮れた人生。それも終止符を打つのか。

そんな時だった。彼女に出会ったのは。
同じ目だった。俺と。
寂しそうでどこか無気力な……
ぶつかった時、どうしてそう思ったのかは分からない。
でも、賭けてみようと思った。俺の人生がこの子で変わることを。

携帯を見ると、連絡先に一つだけ、病院以外の名前がある。
新鮮だった。
「梨沙ちゃん、だったよな……」
 指を出すと、かすかに震えているのが分かる。
―梨沙―
 その名前を押すと、指先が勝手に動いていった。
送信ボタンを押すと、今度はいつもとは違う鼓動の速さが伝わってくる。
でも、苦しくはない。

 数分後。携帯を握りしめている俺がいた。
「やっぱりダメか……」
 携帯を離しかけた時、着信音が久しぶりに鳴る。
急いで携帯を見ると、そこには先ほど見た名前があった。
―梨沙です。明日空いてます。今日会った場所で1時頃待っています―
 短い文だった。でも生きてきた中で一番鼓動が高鳴っていた時かもしれなかった。