毎日のように目をはらして来る梨沙を見ているのは辛かった。
自分があと少しなのはもう自覚している。
でも、最後に梨沙を楽しませてやりたい。
俺は医者に頭を下げて、外出許可をとった。
医者には自分から言った事は内緒にしてほしいと言って。
医者は困惑しながらも頷いた。
「これが最後だと思って。でも、無理をしてはいけないよ」

 梨沙は外に出た瞬間、とびきりの笑顔を見せた。
これが俺の生きる源なんだ。

 二人の時間はあっという間に過ぎた。
帰る時、梨沙があんなことを言うとは思っていなかった。
それでも、俺は嬉しさのあまりに提案した。

 梨沙が寝ると、静かな時間が僕の体を包む。
梨沙の頭を撫でるのもあと何回できるのだろう。
そう思い、俺は便せんを取り出した。

 彼女の顔を眺めながら、俺は便せんに文字を並べる。
手に力が入らないのはずっと前からだった。
でも、彼女の顔を見ていると、自然と力がわいた。

 きっと、もうすぐ終わりが来る。
その前に梨沙に残しておきたかった。
俺の生きた証を……