約一か月。梨沙は毎日笑顔を見せに来た。
だけど、その笑顔はどこか辛そうな笑顔だった。
もし、自分がその辛さの原因だったらどうしたらいいのだろう。
そう思いながらもそれを知らぬフリをして一か月間過ごしてきた。

 医者からは、厳しい現実を突きつけられる日々だった。
そんな時に梨沙が笑顔を見せてくれると手放せない存在なのはすぐにわかる。
だけど、嘘偽りの自分を好きでいてくれる梨沙に申し訳ない気持ちは消えなかった。

 梨沙が帰った直後、病室のドアをノックする音がして、寝ころんだ姿勢を直す。
そこには、前に宣誓布告された梨沙の幼馴染が立っていた。
「はい」
 手渡された紙パックのジュースを受け取ると、彼は口を開いた。
「見舞いに来たわけじゃないから」
 彼の視線は厳しかった。
「梨沙が毎日ここに通ってるの見たから、今日は梨沙の事を言いに来た」
 俺の鼓動は速くなるだけだった。
嫌な予感しかしていなかったからだろう。
「梨沙は、あんたが余命宣告されたの知ってる。それでも、あんたが嘘ついて強がってるの見て、必死に泣きながらこらえてる。そんなあんたが梨沙を幸せにできると思えない」
 俺は目を丸くすると同時に、胸が苦しくなった。
「梨沙は今苦しんでる。これからどうするかはあんた次第だけど。俺はいつでも梨沙を奪うから」
 そういって彼は帰っていった。

 「梨沙が俺の病気を……」
 その瞬間、自分にもわからない、いろんな感情が込み上げてきた。
梨沙は嘘を知っていて、いつも笑顔を見せてくれてた。
それがどんなに辛い事だったかは計り知れない。
 
 涙があふれた。顔を両手で覆い、声も出ない状態で泣いた。
ベッドを拳で叩いても、何も解決しないのはわかっている。
でもこの感情をどうすればいいのかわからなかった。

 夕日が沈むころ、心に決めた。
大切な人のために何ができるか結果を出そうと……