自分の嘘がいけない事だと分かっていた。
でも、梨沙にはこのことだけは知られたくなかった。
梨沙が笑顔を見せてくれた時、心が痛かった。

 医者からはやはり3ヶ月が目安だと言われる。
そして、入院生活を送ることになることも言われた。
今までと同じように、梨沙の顔が浮かんでくると悔しくてたまらなかった。

 梨沙に何も言わずにこの世を去ることになるのだろうか。
俺は何も出来ずに人生が終わってしまうんだろうか。
ずっと不安と恐怖と葛藤の中で、眠ることさえできなかった。

 あたりがだんだんと明るくなるのを感じとると、自然と窓の方に視線を向けた。
その時、携帯が振動してベッドから机に手を伸ばす。
見ると、梨沙の文字が入っている。
―朝陽。今日もそっちに向かうね。何か買ってきてほしいものあったら言って―
 梨沙の優しさに涙が止まらなかった。
嘘をついてる自分に対して、こんなにも優しくしてくれる人がいるのに……
おいていくことになるなんて、嫌だ……

 涙をぬぐって、日記に手を伸ばす。
涙でしわくちゃになってページに文字を書き足すと、いつの間にか眠りについていた。