病院の消毒のような独特の匂いが鼻に入ってくる。
待合室で私は今までの事を整理する。
あれは、私が忘れ物を取りに戻った時だった。
「朝陽?」
そこには意識のない朝陽が倒れ込んでいる。
一生懸命呼んでも反応のない朝陽に私は急いで救急車を呼んだ。
その時見てしまった。
朝陽の髪が少なくなっているのを。
ただ事ではない事はその時にもうわかっていた。
病院について、朝陽の病室を教えてもらった後、医者から引き留められた。
「桜井さんの関係者の方ですよね。今の状況だとやっぱり今朝言った通りかと」
「どういうことですか?」
「余命3ヶ月という事です」
私はその場に立ち尽くした。
朝陽があと3ヶ月しか生きられない……
朝陽が私の前からいなくなってしまう……
私は力が抜けたように病室まで歩いた。
そこにはただ天井を見つめる朝陽がいる。
その病室に入ると、私は朝陽の顔を見れなかった。
「朝陽……」
私の声を消すように朝陽は私の頭に手をやり、優しく笑った。
「梨沙、ごめん。心配かけて。でも、ちょっとしたぜん息みたいだから気にしないで」
私は悟った。朝陽はこの病気を隠したいんだ。
きっと、朝陽は生きる希望を失ってない。
……だったら私だって一緒に戦わなきゃ。
「そっか。びっくりしちゃった。早く退院できるといいね」
「うん。梨沙とまたどこかに行くために落ち着かせるよ」
朝陽は最後まで病気の事を隠し、笑顔を保ち続けた。
私もその間だけはと、笑顔で会話をした。
でも、そんな簡単に強くなれるわけがなかった。
帰り道、涙が止まらなかった。
泣きたいのは朝陽だという事は分かっている。
でも、朝陽との時間があと3ヶ月だなんて……
私は、手で涙をぬぐい続けた。
「梨沙?」
急に呼ばれたその名前に私は急いで涙を止めようとしたが止まらなかった。
「梨沙、どうしたんだよ」
目の前には啓紀が私の肩を掴みながら、私を心配そうに見ていた。
何も言えずにただ泣く私を見て啓紀は背中をさすりながら家まで帰った。
家に着くと、急にまた不安感が襲い、涙があふれだす。
「梨沙……」
啓紀の目を見て、私は口を開いた。
「……恋人が死ぬかもしれない」
啓紀は目を丸くした。
それでも、啓紀は泣く私を優しく抱きしめ頭をなでた。
「今は、思う存分泣けよ。今日は母さん帰ってこないから。いつまでも俺が話聞いてやる」
啓紀の優しさに私は啓紀の腕の中で泣いた。
今まで感じたことのないような不安と恐怖に涙が止まらなかった。
気付くと、目には眩しいほどの光が入ってくる。
私はリビングのソファで寝てしまい、朝になっていた。
横を見ると、啓紀が私を寝かしつけてくれたかのように寝ていた。
自分にかかっていたタオルケットを啓紀にかける。
カーテンから差し込む光を見て、私は決意する。
「……私も朝陽の光にならなくちゃ」
朝陽の前では常に笑顔で居よう。
朝陽が私に光をくれたように、私も朝陽に光をあげなくちゃ……
待合室で私は今までの事を整理する。
あれは、私が忘れ物を取りに戻った時だった。
「朝陽?」
そこには意識のない朝陽が倒れ込んでいる。
一生懸命呼んでも反応のない朝陽に私は急いで救急車を呼んだ。
その時見てしまった。
朝陽の髪が少なくなっているのを。
ただ事ではない事はその時にもうわかっていた。
病院について、朝陽の病室を教えてもらった後、医者から引き留められた。
「桜井さんの関係者の方ですよね。今の状況だとやっぱり今朝言った通りかと」
「どういうことですか?」
「余命3ヶ月という事です」
私はその場に立ち尽くした。
朝陽があと3ヶ月しか生きられない……
朝陽が私の前からいなくなってしまう……
私は力が抜けたように病室まで歩いた。
そこにはただ天井を見つめる朝陽がいる。
その病室に入ると、私は朝陽の顔を見れなかった。
「朝陽……」
私の声を消すように朝陽は私の頭に手をやり、優しく笑った。
「梨沙、ごめん。心配かけて。でも、ちょっとしたぜん息みたいだから気にしないで」
私は悟った。朝陽はこの病気を隠したいんだ。
きっと、朝陽は生きる希望を失ってない。
……だったら私だって一緒に戦わなきゃ。
「そっか。びっくりしちゃった。早く退院できるといいね」
「うん。梨沙とまたどこかに行くために落ち着かせるよ」
朝陽は最後まで病気の事を隠し、笑顔を保ち続けた。
私もその間だけはと、笑顔で会話をした。
でも、そんな簡単に強くなれるわけがなかった。
帰り道、涙が止まらなかった。
泣きたいのは朝陽だという事は分かっている。
でも、朝陽との時間があと3ヶ月だなんて……
私は、手で涙をぬぐい続けた。
「梨沙?」
急に呼ばれたその名前に私は急いで涙を止めようとしたが止まらなかった。
「梨沙、どうしたんだよ」
目の前には啓紀が私の肩を掴みながら、私を心配そうに見ていた。
何も言えずにただ泣く私を見て啓紀は背中をさすりながら家まで帰った。
家に着くと、急にまた不安感が襲い、涙があふれだす。
「梨沙……」
啓紀の目を見て、私は口を開いた。
「……恋人が死ぬかもしれない」
啓紀は目を丸くした。
それでも、啓紀は泣く私を優しく抱きしめ頭をなでた。
「今は、思う存分泣けよ。今日は母さん帰ってこないから。いつまでも俺が話聞いてやる」
啓紀の優しさに私は啓紀の腕の中で泣いた。
今まで感じたことのないような不安と恐怖に涙が止まらなかった。
気付くと、目には眩しいほどの光が入ってくる。
私はリビングのソファで寝てしまい、朝になっていた。
横を見ると、啓紀が私を寝かしつけてくれたかのように寝ていた。
自分にかかっていたタオルケットを啓紀にかける。
カーテンから差し込む光を見て、私は決意する。
「……私も朝陽の光にならなくちゃ」
朝陽の前では常に笑顔で居よう。
朝陽が私に光をくれたように、私も朝陽に光をあげなくちゃ……