とだけ届いていた。そう、もうすぐ花火大会の会場に行く時間が来てしまったという事だ。もう後戻りはできない。僕は固く決心して軽く荷物をズボンのポケット等にしまって外に出た。
 外に出たら最初に僕は最寄りの駅まで徒歩で行き、電車を待った。ホームには恐らく花火大会に行くのだろう。たくさんの人が詰め寄っていてそれを見た僕は会場まで行くのは一苦労しそうだなと思い、もう少し早く出れば良かったとちょっと後悔もしつつ、しばらく駅のホームで待っていたら電車がやってくる。そのやってきた電車も相当な程人が多く車内はもはやひっきりなしの人で溢れていた。会場の最寄り駅までずっとこのままだと思いつつも、僕はじっと2駅先の目的地までじっくり電車に揺られる事にした。

 花火大会に行くというのがいかに大変なのか、嫌でもわかる。駅の改札口前にはたくさんの人が花火を今か今かに楽しみに待っていた。今日はここで楠野さんと待ち合わせしている筈なのだけど、いない。探しても仕方ないので、僕は改札口前で待つ事にした。
 通行の邪魔にならない様に隅っこに移動して楠野さんを待つことにする。それからも度々電車が止まるとたくさんの人が改札口を通ってこの駅にやってくるのを度々見る。僕はその中に楠野さんがいないか、じっくり人混みを観察していた。
「安曇くん!」
 突然の声に驚いて軽く悲鳴を上げた。声のした方に向けるとそこにはおめかしをした楠野さんが立っていた。
「ご、ごめん! 大丈夫?」
「あ、だ、大丈夫だよ」
 そう言ってこれ以上深く心配されないように少し強く見せてしまう。
「そっか。それじゃあ行きましょ」