そうだ。その頃、私たちは本当に、毎日毎日飽きもせず、馬鹿みたいにいつも一緒にいた。

 クラスは同じ、でも部活は別々(秀がサッカー、私が陸上、和佳が水泳)。趣味もどちらかといえばばらばらだし、性格だってそんなに似ていない。

 私たちがもしパズルのピースだったら、きっと隣同士にはならない。描いてある模様も、色も、あまりに違いすぎて、たぶん神様だって試しにはめてみようとも思わない。

 でも中学生の私たちは、確かに隣り合わせに立っていた。模様も色も違うけれど、パズルのピースとしては合っていて、だから境目は綺麗に繋がっていた。

 お昼ご飯を一緒に食べ、部活の後一緒に帰り、休日には三人で出かけた。夏にはぼけーっと海を眺め、秋には並んで焼き芋を食べ、冬には雪玉を投げ合って、真っ赤にかじかんだ指先にそろって息を吹きかけていた。

 どこにでもいる、普通の中学生だったと思うけれど、どうだろう。自分ではよくわからない。

 中学生、ってきっと不安定なんだ。パズルのピースから突き出したでこぼこも、数か月単位で形が変わっていく。少なくとも、教室の中には、次から次へとつながるピースが変わっていく人がいた。

 私たちもそうなるのかな、と思うこともあった。

 受験はそのきっかけの一つだった。違う高校へ行けば、違う人に会う。そうしたらきっと、繋がるピースが変わって、自分のピースの形も変わっていく。

 変わってしまったピースは、昔繋がっていたピースとは繋がらなくなる。

 きっと、ずっと一緒にはいられないんだろう。でも、もし、三人で同じ高校へ行けたら……?


 夏が過ぎて、秋になった。
 
 秋がやがて、冬に変わった。

 西柊はやっぱり、私には少し高望みだった。なかなか上がらない模試の判定はよくてもC、先生にはしつこくランクを下げろと言われたけれど、私は譲らなかった。

 自分でも驚くほどに、私は西柊に固執した。そこまで二人と別れたくない……というより、自分だけ置いてけぼりにされるのが嫌だった。

 中学卒業と同時に離れ離れになるんだとしたら、全員同時だと思っていた。でも秀と和佳が同じ高校へ行ってしまったら、私だけが離れ離れだ。
 
 なんだかそれは、嫌だった。とても、嫌だったのだ。


 クリスマスが過ぎて、年が明けた。

 冬休みも、私は死に物狂いで勉強した。秀と和佳は、根気強く私に勉強を教えてくれた。秀はA判定だけど、和佳ほど余裕があるわけじゃない。和佳は推薦も狙っている。

 二人とも自分のことでも忙しいだろうに、冬休みの半分近い時間は私の勉強に付き合ってくれた。

「二人とも、自分の勉強大丈夫なの?」

 と、ついつい訊いてしまったときもあった。

「大丈夫、推薦で受かるから」

 和佳は笑ってそう言い、秀は顔をしかめて私を睨んだ。

「他人の心配してる場合かよ。おまえが一番やばいんだぞ」

「わかってるよ!」

 秀や和佳が、息をするようにできる計算が苦手だった。二人が当たり前のように暗記している公式を覚えるのに、倍以上の時間がかかった。

 それでも、最後のV模擬ではなんとかB判定までもっていき――結論から言えば、私は「やればできる子」だってことを、きちんと証明したのだ。