いろいろと悩んだ結果選んだのは、夏らしくトマトのコンソメジュレ寄せ。コンソメスープで煮込んだミニトマトをスープごとゼリー状に固め、冷やしていただく。コンソメ味のなかにトマトの酸味がほんのり漂う、さっぱりとした一品だ。
「遅くなっちゃったな……」
部活を終え、急ぎ足で教室へと向かう。
柔らかい感触を出したくてゼラチンを少なめにしたら、思ったよりも固まるのに時間を要した。待っている間に夏休み中に取り組むレシピコンテストの相談などをしたのでさほど待ち時間もなかったけれど、いつもより三〇分くらい遅い。夏だからまだ日は昇っているけれど、時計を見ると時刻は既に六時半を回っていた。
置きっぱなしにしていた教科書を鞄に突っ込むと、教室を後にする。そのとき、「雫!」と呼ぶ声がして、私は後ろを振り返った。
「あれ? 侑くん?」
肘を折り、手持ち鞄を肩越し後ろに下げて持った侑希がこちらに歩いてくるのが見えた。私は立ち止まり、その様子を見守る。
男の子ってああいう鞄の持ち方をする人が多いけど、手首が痛くなったりしないのかな、なんて思ったり。
「どうしたの、こんな時間まで」
「部活だよ」
「あ、そうなんだ。一緒だね」
侑希がバスケ部に入っているのは知っているけれど、木曜日が練習日なのは知らなかった。侑希は私のすぐ前まで歩いてくると、立ち止まった。
「バスケ部って週二回だっけ?」
「うん。火、木。あとは、隔週で土曜。遅いし、一緒に帰る?」
「うん。そうしようかな」
窓から見える空は、水色に薄墨を混ぜたような色をしていた。きっと、最寄り駅に着くころには真っ暗になっているだろう。
帰り道、駅までのさくら坂を上っている最中に予想通り太陽はすっかりと顔を隠してしまった。
「勉強なんだけどさ」
不意に侑希が口を開く。
「毎週金曜日に駅前のすみれ台図書館に行くのはどうかな? 聞くことがあれば、聞いてくれていいし、なければ俺は俺の勉強をすればいいし」
「え、いいの?」
すみれ台図書館とは、私と侑希の住む地元の駅──すみれ台駅の近くにある図書館だ。駅から五分ほどの場所にあり、無料で夜八時まで使える自習室が併設されている。私も高校受験前は中学の友達と時々利用していた。
「遅くなっちゃったな……」
部活を終え、急ぎ足で教室へと向かう。
柔らかい感触を出したくてゼラチンを少なめにしたら、思ったよりも固まるのに時間を要した。待っている間に夏休み中に取り組むレシピコンテストの相談などをしたのでさほど待ち時間もなかったけれど、いつもより三〇分くらい遅い。夏だからまだ日は昇っているけれど、時計を見ると時刻は既に六時半を回っていた。
置きっぱなしにしていた教科書を鞄に突っ込むと、教室を後にする。そのとき、「雫!」と呼ぶ声がして、私は後ろを振り返った。
「あれ? 侑くん?」
肘を折り、手持ち鞄を肩越し後ろに下げて持った侑希がこちらに歩いてくるのが見えた。私は立ち止まり、その様子を見守る。
男の子ってああいう鞄の持ち方をする人が多いけど、手首が痛くなったりしないのかな、なんて思ったり。
「どうしたの、こんな時間まで」
「部活だよ」
「あ、そうなんだ。一緒だね」
侑希がバスケ部に入っているのは知っているけれど、木曜日が練習日なのは知らなかった。侑希は私のすぐ前まで歩いてくると、立ち止まった。
「バスケ部って週二回だっけ?」
「うん。火、木。あとは、隔週で土曜。遅いし、一緒に帰る?」
「うん。そうしようかな」
窓から見える空は、水色に薄墨を混ぜたような色をしていた。きっと、最寄り駅に着くころには真っ暗になっているだろう。
帰り道、駅までのさくら坂を上っている最中に予想通り太陽はすっかりと顔を隠してしまった。
「勉強なんだけどさ」
不意に侑希が口を開く。
「毎週金曜日に駅前のすみれ台図書館に行くのはどうかな? 聞くことがあれば、聞いてくれていいし、なければ俺は俺の勉強をすればいいし」
「え、いいの?」
すみれ台図書館とは、私と侑希の住む地元の駅──すみれ台駅の近くにある図書館だ。駅から五分ほどの場所にあり、無料で夜八時まで使える自習室が併設されている。私も高校受験前は中学の友達と時々利用していた。