保険会社の営業に、再就職した。ノルマは、厳しいが、給料は良い。
バイクで、ルートを回る。ここのルートは、老人が多い。名前から、信用力はある会社だ。
ある日、87歳の女性に、新しく保険を乗り換えさせるために、日参した。
「おばさん、何か困ったことは、ない?」
「この頃は、足が悪くて、買い物に行くのに、苦痛だねえ。」
「それなら、メモさえ渡して貰えば、私が、買ってきますよ。」
「そりゃ、助かるね。」
「任しといて」

上司に、今日のことを、報告した。「もうすぐ、一件新規で、取れそうです」
「よろしくな」
折を見て、おばさんの預金通帳を、見せてもらった。
「おばさん、保険を見直し、しませんか?」
「どうしてだい?今のままで、充分じゃ。」
「今の方が、安くなるんですよ。」

しばらく、考えていたおばさんが、こう言った。
「あんたに任せるよ」
「ありがとうございます。」

今月のノルマは、達成した。今ある保険を、解約させて、新たに新規で契約した。なんの悪気もなかった。

この会社は、不適切な契約を、老人に勧めたとして、告発された。