「……なんだよ。いきなり大声を出しやがって!
 行き先を間違えて買ったのか?」

「ううん。切符代、食べちゃった!」

「……は? 食べ……? って、ってナニを!?」

 食えるのか、そんなモノ!?

 なんて。

 驚いて聞き返す宗樹に、わたしはごめんって謝った。

「今日来る時、宗樹に立て替えて貰った切符代!
 まさか、学校でクレジットカードが使えないなんて、知らなくて。
 ここで、宗樹に会えるとも思えなくて……
 お昼代にしちゃった!」

 うう。空っぽな財布を見て今、思い出すなんて~~!

 だからと言って、この半無人駅っぽい君去津駅だって、クレジットカードが使えるかは、かなり謎なんですが……

 自分のヒト差し指同士、先をつついてうつむくわたしに、宗樹はくす、と笑った。

「金持ちのお嬢さんのくせに、そんな細けーこと気にするんだ?」

 意外~~って言ってるみたいに目を細めた宗樹に、わたしはバタバタと手を振った。

「だって……お金は、単に財産って意味だけじゃなく、人間として生活するための基本だから、どんなに少なくても大事にしなさい。
 オトモダチ同士、知り合い同士お金の貸し借りはしちゃいけませんって」

「親が言ったのか?」

「ううん、西園寺家のご先祖様から代々言われてる、家訓って言うヤツ?」

 お父さんから教えてもらった言葉だけど、わたしもそう思って守ってる、って言ったら、宗樹は「ふーん、だから西園寺は先祖代々ずーっと金持ちなんだな」なんて、感心したように言うと、肩をすくめた。

「それ、立派なお言葉だけど、俺に対してだけは無効な」

「なんで!」

「まず、俺とあんたはこれから先『絶対に』オトモダチにはならない……なれない。
 そして『ただの知り合い』でも終われないから」

 う……と。

 口調は軽いけれど……宗樹の顔、心なしか怖い?

 その怖い顔のまま、彼は言葉をつづけた。

「……それに、そもそも『俺の全部』は西園寺のモノだからさ」

「……え?」

 それって、どういうコト?

 首をかしげるわたしに、宗樹は堅い表情のまま、口元だけで笑う。

「ウチのクソジジィとオヤジの就職先って一体ドコだよ?
 俺達家族が飯食って、服着て、住む家があんのも。
 そして、このガッコに通えるのも、結局、全~~部西園寺が出してくれるからだ。
 生きる手段を全て西園寺に頼っている以上、ジジィもオヤジも俺自身もまた、西園寺のモノ、だろ?」

 え?

 宗樹はとても真面目に……真剣な顔をしているけれど、言ってる意味が良く……判らない。

 宗樹が……彼の家族が、ウチの……西園寺のモノ?

 まさか!