「あんた……ナニやってんの?」

「宗樹~~!!」

 ほっとする声とその姿に、わたし嬉しくて思わず彼に抱きついちゃった。

「え~~んっ! 怖かったよ~~宗樹~~!」

「えっ! わっ!? ちょっと、まてまてまてっ!
 お嬢さんっ! 待ってくれ!」

 俺にだって心の準備っていうモノが……っ!

 なんて、宗樹は、よくわかんないことを言ってるけど!

 誰に聞いても『沈着冷静で慌てない』はずの宗樹がものすごく焦ってる気がするけど、それ、無視!

 ぴよ~~んって音が聞こえそうな勢いで宗樹の胸に飛び込むと、ぎゅっと抱きしめ、そのまま彼の顔を見上げた。

「怖くて一人では君去津駅に入れません~~
 なんとか、して」

 そう訴えれば、彼はわたしに張り付かれたまま、つぶやいた。

「……それって、俺のせい?」

「朝!
 宗樹に怖い話を聞かされたからかも……」

「うっ……
 判った、判った、悪かった!
 だから、一回とりあえず、俺から離~れ~て~~」

 本当に困ったようなその声に、ぱ、と手を離すと、宗樹は息をついた。

「仕方ねぇ、帰りも付き合ってやる」

 お嬢さまは、これだからな~~と宗樹のしぶしぶ言っているはずの口元が、少し笑ってる……気が……

 わたしがじっと眺めていると、宗樹はすぐに視線を外し、コホン、と軽く喉の調子を整えて仕切り直した。

「それでお嬢さんはどうしてこんなに遅くまで、ガッコの周りをうろちょろしてんだよ」

「そ……それは、部活をあちこち見て回ったからよ」

「……軽音部には、来なかった」

「だって、宗樹が来んな、って言ったじゃない」

「ああ、そういえば言ったな……そんなこと」

 ちぇ、心配してやきもきしていた俺が莫迦みてぇじゃん、なんて。

 口の中でつぶやいてた宗樹に「今なんて言ったの?」って聞き返したら、手をぐいーーっと引っ張られた。

「ほら。帰るぜ、お嬢さん」

 宗樹、わたしを無視したあげく、ちょっと乱暴~~
 
 でも。

 宗樹に手を引かれてゆく君去津駅は、さっきと比べ物にならないぐらい怖くなかった。

 タダの古ーい駅で、お化け屋敷要素、全く無いんですが……

 ……なんでだろう?

 このままぼーっと手を引かれたままだと、また帰りの切符まで、宗樹に買われてしまいそうだつたから。

 切符の自動販売機直前で、宗樹を追い抜かすことも大丈夫だった。

 宗樹が側にいるから、かな?

 すごく安心する。

 この安心感は、なんだろうって考えながら、お財布を出し切符を買って……

 思わず「わぁ」と声をあげちゃった。

 お、思い出した~~!

 きゃ~~どうしょう!? って。

 慌てていたら、宗樹に顔を覗き込まれてしまった。