なにしろ、本宅を任されて半分引退状態の爺はともかく。

 現役バリバリの執事をやってる宗樹のお父さん。

 今日もお仕事をしているウチの父について、世界を股にかけた分単位のスケジュールを管理しているはずだ。

 そーいえば。

 入学式も、部活紹介も、蔵人さんが乱入して来るまで、恐ろしくスムーズだったなぁ。

 きっと、宗樹がマネージメントしたんだろうな、って判る。

 だから、聞いたんだ。

「……えっと。
 それならなおさら、マネージャーって難しくない?」

 首をかしげるわたしに、井上さんはまぁ~ねぇ~と手を振った。

「だから、他のバンドはともかくCards soldierには軽音部に所属した正式なマネージャーはいなかったし。
 時々マネージャーを名乗る人が出て来ても、それは軽音部とは関係ない。
 ダイヤモンド・キングのとっかえひっかえしている彼女の一人だったりしてたんだけど……」

「なぁに……?
 井上さんって、ダイヤモンド・キングの……彼女になるの?」

 朝、聞いた限りでは、確かに今はフリーっぽかったけれどって、言ったわたしに、井上さんはまっさかぁ~~って笑った。

「さすがに、あんなに派手で女遊びの激しいヒト、好きになったら不幸だよね。
 ああいうタイプは、外から見て『きゃーカッコイイ!』って騒ぐだけが一番良いのよ!」

「ふうん」

 そうかもしれない、ってうなづいたら、井上さんは熱く語りはじめた。

「二人のウチどちらかを彼氏にするなら、やっぱりクローバー・ジャックの方だよね」

「……え」

 井上さんが、そうズバッと言うのを聞いて、なぜだか心臓がドキン、と跳ねあがる。

「そ……そっか、宗樹も、人気あるんだったよね」

「当たり前よ!
 Cards soldierのジャックだよ?
 いつも落ち着いてて、冷静だし。
 自分はやることなすこと、そつがないけど、メンバーが大失敗をやらかしても、ため息一つで許してくれるし。
 普段、すごく優しくてキングよりも人気あるんじゃないかな?
 ただ、どんな美人の告白も断っているから、実はどっかに本命がいるか、すでに彼女もちじゃないかって噂だけど~~ぉ?」

 井上さん。

 何かモノを言いたげにわたしの顔をじっと見た。

 へ?

 わたしのこと!?