Shit!(シット)
 それが本心だと思ってるのか、鈍感野郎!!」

 と吐き捨てた蔵人さんの言葉に、神無崎さん、とうとうキレた。

 目を剣呑に細め、手にしていたマイクをぽい、と投げ捨てたかと思うと、ひらりとステージから飛び降り唸る。
 
「この話は、昨日の夜! お前と散々しただろーがよ!」

「納得出来るか! クソッタレ!」

 金色の髪の蔵人さん、名字の『ライアンハート』そのもの。

 まるで、怒ったライオンみたいだったけれど、神無崎さんの方だって、猛獣だった。

 朝、駅で傷だらけのまま、ちらっと見せたその『怖さ』が、単なる『ちょっとした不機嫌』でしかないことがよ~~く判る。

 一触即発って言うの?

 しびれる緊張感で、止めるべき先生達も手が出せず。

 二人は、あり得ないほど近寄って、今にも殴り合いを始めそうな状況に、体育館がしん、と静まり返った時。

 その、怖い二人の間に、割って入ったツワモノがいた。

 神無崎さんの腕を自分の腕に絡めて引っ張ると。開いた隙間に、自分の身体を押し込んで両手を広げ、簡単に二人の間を広げたんだ。

「は~~い、はい、ストップ。ここまで」

 あまり緊張感のないその声に、二匹の獣が自分たちの喧嘩を邪魔する相手を、ぎろっと睨み。

 ……それが、誰かと判ったのか、両方とも少しだけ、肩を落とす。

「クローバー・ジャック」

「……宗樹」

 そんな二人の様子を見て、君去津高の三匹めの獣は、今日、世界が終わるようなため息を深々とついた。

「まず、ここは新入生の歓迎をし、各部が自分達の活動内容を発表する場だ。
 それ以外の私語もパフォーマンスも禁止だと、決めた張本人、生徒会長の裕也が先頭切って破ってどうする。
 そして、蔵人。
 あんたと俺達は昨日、散々話した気がしたが、もう少しきちんと話し合う必要がある。
 だけど、それは、ここじゃねぇ。
 場所と、時間を改めよう」

「ふん……愛変わらず『優等生』なしゃべり、方!
 結局貴様もキングと同じ考え、か」

 見損なったぞ、ジャック! なんて。

 蔵人さんは鋭く怒鳴ると、宗樹を振り切り、舞台の上に飛び乗った。

「だから、待て蔵人! 舞台の上は……!」

「るさいな! ジャック!
 新入生への、部活紹介をすれば問題ないん、だろ!
 貴様たちがそんな態度、なら!
 僕だって紹介するヤツが、ある!
 ……別に君去津高公認ってわけじゃ、ないけどな!」

「蔵人! てめ、待ちやがれ!」

 怒鳴る神無崎さんの声を無視して、蔵人さんは良く通る声で、叫んだ。

 一部始終を見守っているしかなかった、生徒と先生たちに向かって。