「宗樹!! 神無崎さんっっ!!
 あなたたち、そこで一体何を……!!」

 思わず叫んだわたしの声を、宗樹はふぃ、と無視し。

 神無崎さんは、げらげら笑うと、わたしに向かって投げキッスを贈ってよこした。

「学園アイドルのお仕事!
 君去津Cards soldier、ダイヤモンド・キングの神無崎裕也たぁ、オレサマのことだぜ!
 さっきは振ってくれたけど、歌聴いたら惚れるぜ、西園寺!」

「か……神無崎さんが、ダイヤモンド・キング!
 じゃあ宗樹、クローバー・ジャック!?
 宗樹って、バンドなんて組んでたんだ……!」

 神無崎さんは真紅を基調にした何だか派手な布の束を右肩にかけ、宗樹は黒を左にかけている。

 どうやら、その布をちゃんと着れば舞台衣装になるらしく……そして。

 なによりその顔に、傷がない!

 バンド用の下地メークですっかり酷い傷が隠れてた。

 なんで、彼らが男子トイレなんて変な場所で、待ち合わせしてたかってこのメークをするため?

 宗樹が自分たちに傷があるのをバラすなって言ってたのは、完璧に傷を隠す自信があったからに違いない。

 そして、一緒に登校したくないとか。

 声をかけるなって意地悪を言ってたのは……

 とても数の多いみたいなCards soldierのファンから、わたしを守ろうとしてくれたの……かな?

「なんだ、お前!
 クローバー・ジャックの正体、知らなかったのか!?」

 びっくりしているわたしに、神無崎さんは、一瞬きょとんとした顔をしたかと思うと、隣にいる宗樹をつついた。

「へぇ、宗樹も案外ヒトが悪りぃじゃん。
 自分が他の女にモテまくりで、きゃーきゃー騒がれてるとこ、コイツに見られたくなかったのか?」

 そんな神無崎さんの声に、宗樹がムキになって言い返す。

「ちげーよ! そんなんじゃねぇし!
 もう、時間がねぇんだ! さっさと移動しねぇと……」

「うぉ~~ めずらし~~
 宗樹でも、照れる事があるんだな~~
 コイツは、本当に本命……」

「わーー、うるせえ、黙れ!」

 からかう神無崎さんのセリフをもぎ取るように宗樹は怒鳴ると、かなり本気のパンチを、繰り出した。

 それを、両手でぱしっと受け止め、神無崎さんが更に笑う。

「あははは、お~も~し~れぇ~!
 おい、西園寺!
 お前、部活決めるならさぁ、軽音部に来いよ!
 このオレサマが、直々に大歓迎してやるぜ!」

「莫迦! ぜってーーー来んなよ!」

 来たら、コロス! とか物騒なセリフを言い放ち。

 にやにや笑いが止まらないらしい、神無崎さんの首根っこをつかんで引っ張り退場する宗樹を、わたし呆然と眺めてた。

「な……なんだか、嵐が過ぎ去った後みたい……」