「ふん。
 西園寺、執事一族の一員なのになんで、きちんとしてないの?
 ……ってか?
 なんか、予測できる言葉をそのまま貰っても、面白くも可笑しくもねぇな」

「ううん、別にそうじゃなく! ただ!」

 びっくりして、考えたことを言葉にできなかっただけで!

 宗樹がちゃんとしてない、とは思ってないよ!って。

 そう、続けたかった言葉は、宗樹自身にさえぎられた。

「いいぜ、もう面倒~~くさいのは一番嫌いだ。
 お嬢さんは、一人でガッコに行くの、決定。
 ん、で。
 校内で俺に会っても絶対ぇ、話かけんなよ。
 ま、学年違げーし。
 色々あっから、まず声もかけられねぇだろうがな。
 それに、俺と裕也の顔に傷があることをバラしたらコロス」

 どうやら、注意事項らしい。

 矢継ぎ早で、一方的な要求に、ちょっと待ってよって声をかけたら。

 に~ら~ま~れ~た~

 それでもめげずに、わたし頑張る。

 だって、何か誤解してるんだもん。

 もう少し一緒に居られたら、お互いの気持ちが判りあえる……かな?

 あんまり暖かくない視線が、びしばし突き刺さる感じするんだけど……あえて無視して言ってみた。

「神無崎さんも、同じ君去津高なんだね。
 顔の傷、バラしたらって、わたしが何か言わなくても、そんなの、見れば誰にだって一目で判るじゃない。
 そのまま学校に行って、大丈夫なの?
 神無崎さん待っている間、少しは……その。
 目立たなくしてみようか?」

「……いらねーよ。
 あんたが頑張っても、なんとかなるとは、ちっとも思えねぇ。
 自分でやった方がマシだ」

「でも……」

「しつけーな! いい加減にしろよ!」

 宗樹にガッと咆えられ、わたし、思わず一歩飛び下がった。

 びっ……ビックリした。

 そう、思わず思ってしまったわたしを見て、少し反省したらしい。

 宗樹は、声を落としてささやいた。

「……それに、俺達の待ち合わせって、男子トイレだぜ?
 お嬢さんも、一緒に入って待つつもりなのか?」

「………!」

 宗樹に言われて今度はわたしの方が、カッ、と頭に血が上った。

 それが、男子トイレで一緒に待つ? なんて言われて恥ずかしかったからなのか。

 急に機嫌を損ねた宗樹に、ツンケンされて腹が立ったのか。

 そんなことも、良く判らないまま。

 わたし、宗樹の前から逃げるように駆けだした。

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