……そんな風に独り言みたいに口の中で呟いて。

 扉のガラスに背中をつけ、天井を見上げた宗樹の表情(かお)は、もう何もしゃべりかけるな、って言われているみたいだ。

 だから、声をかけられなかったけれども。

 わたしの方は、申し訳ない気持ちで落ち着かなかった。

 た、確かにさっ。

 本当に独りぼっちは心細かったから、宗樹の通ってる公立高校を狙ったわよ!

 だけど、彼に頼るつもりは無かったのに。

 ど~~してもダメなときに、ちらっと顔を見て、安心できればそれでよかったのに。

 学校着く前に、既にこんなお世話になっちゃって、どうするのよ!

 せっ……せめて、これから先のトラブルは、自分の力でなんとかしなくちゃ!

 宗樹が黙って、わたしがこっそり自分の手を拳に握ってしばらく。

 ようやく、高校のある君去津についたん……だけど。

 ……だけど。

 さっきのJRの駅と全く違う様子に、驚いた。

 え……ええっと。

 この時間、君去津駅に降りた高校生……って、わたしと宗樹の二人だけ?

 ホームに待っているヒトビトが乗り込んで、電車が行ってしまえば、そら。

 歴史を感じる、と言えば聞こえが良いけれど。

 要は古くてぼろっちぃ、ただただ広いだけの駅に二人ぼっちで取り残されたような気がする……んですが……

「……これって、一体……」

 季節は、春。

 時間は朝。

 天気は、晴れなのに、この駅には、何か出そうな雰囲気、ある。


 幽霊とか!

 妖怪とか!!

 お化けとか!!!
 


「そ……宗樹。ここ……なんで、こんなにヒトがいないの?」

 呆然と聞けば、宗樹はひょい、と肩をすくめた。

「さあ。とりあえず、今はふつーの通学時間より、だいぶ早ぇからじゃねぇの?
 それに、君去津のヤツらは、ほとんどここの真反対方面からバス通してっからな。
 海が近いし、海水浴シーズンは超~~混むけど。
 それ以外、駅は大体こんな感じだぜ?」

「……なにか、迫力ある駅だよね? 出るって噂ない?」

「出る? ああ、幽霊とか? そんなもん出るわきゃね……」

 ……って、そこまで言いかけて、宗樹の目がすぃ、と細くなった。

「……なんだ、お嬢さんは、ここが怖いのか?」