背、高いなぁ、ってぎょっとした神無崎さんより若干低い感じするけど、155センチのわたしより、20センチは背が高い。

 君去津の制服を軽く着崩し。少し長めの茶色がかった、さらっさらの髪を後ろでくくってる。

 眼光鋭い狼みたいな神無崎さんに比べれば、だいぶやさしい違うタイプのイケメンだ。

 言われてみればなんとなく、年をとっても年齢不詳の俳優さんみたいに整ってる爺の面影がある。

 甘い中性的な顔立ちをしているけれど……弱々しい感じがまったくしなかった。

 だいたい彼の口元にも、神無崎さんより酷くないものの、殴られて切れた跡があるし……って。

 このヒトも、昨日ケンカしたのかな? って思った。

 うんと小さなころは、こんな風に人と争うコじゃなかったような気がして、宗樹の傷ついた顔から、目が離せない。

 思わずじっと眺めているわたしに、宗樹はちょっと肩をすくめると、そのまま、すたすたとわたしたちの間に割って入り、神無崎さんの傷ついた方の頬をそっと撫でた。

「お~~お。
 見事に腫れてきやがったな~~
 こりゃ、ごまかすのが、めんどくさそうだ」

 ま~~た、手間かけさせやがる、なんて気軽に言って笑う宗樹の手を振り払って、神無崎さんは怒鳴った。

「お前、いっつも取り澄ました顔してっくせに、なんか最近、爺さんからの電話相手に、しょっちゅう怒鳴りあってたじゃねぇか!
 西園寺がらみで、なんか面倒なことになってるんだろう?
 だから、オレは何時も世話になってるお前に、少しぐらいなんか返そうと思ってだな!」

「……女にケンカ売った?
 ちがうな。
 野次馬根性で西園寺の女を、探したんだろう?
 で、ついでに面倒臭い女だったら、俺のために排除しようと思ったのか?」

「う~~判ってるよ、コレがみっともねーことぐらいは!」

 一言喋るたびに顔が痛いだろうに、ぎゃーぎゃーと騒ぐ神無崎さんの肩をいなすようにぽんぽん、と宗樹は叩いた。

「お前のクソ熱っちい友情ごっこはキライじゃねぇけどな。
 俺だって、自分の面倒は、自分で見れるぜ?
 お前は、女はナンパするもんで、戦う相手じゃねぇ。
 どんなにクソムカつく相手でも下心丸出しで、優しくするって、常日頃言ってるじゃないか。
 俺のために、そいつを曲げんじゃねぇよ」

 そんな宗樹の言葉に、神無崎さんはむっとした声を出した。