留学前に通っていた日本の英会話学校で、男女、年齢関係なく沢山の友達ができた。
A君もそのうちの一人で、かっこいい雰囲気のする、いい大学の学生さんだった。私と同じ時期に留学するからと連絡先を交換していた。
留学中、私の滞在している町にA君は中国人の友達と遊びに来た。
好きとかそういう感情は一切なかったけど、覚えていてくれたことは嬉しかった。私は忘れてたから。
英会話学校で一緒にクラスをとってた時はそれなりに楽しかったので、A君の印象はよかった。
遊びに来ると知らされたときは、喜んで町を案内すると張り切っていた。
その日は待ち合わせの時間が朝8時。バスの本数は少なく、バス停まで歩いて30分。目的地まで1時間半と、待ち合わせ時間に間に合わせようとすると、か なり早起きをして家を出なければならなかった。
待ち合わせ場所についたときは、まだ約束の時間まで20分くらいあった。
その間、どこから来るのだろう、久しぶりに会ってなんて挨拶しようとか、色々考えていた。
すると遠くからアジア人らしい男性二人が歩いて来た。
来た!と思って、顔を合わせるのを照れくさく思っていたときだった。
「おはよう。来てくれてありがとう」
A君が手を上げてにこやかに第一声をあげたそのとき、彼の顔をみて私は驚いた。
なんと鼻の穴から、青っぱなのような大きな鼻くそがぶら下がるようについていた。それはもう無視できない光景。
その隣にはA君の友達がいた。A君は私をその人に紹介してくれたのだが、その友達はA君の顔をしっかり見ているのに鼻くそには何も言及しない。
私はどうすればいいのかわからなくなった。そわそわしているとA君は言った。
「言いたいことわかってるよ」
えっ、判ってくれてるの。それってわざとなの? 思わず目をぱちくりした。
「俺、すっかり太ってしまったから、びっくりしたんだろ」
ち、違う。太ったことは認めるが、それよりももっと衝撃的なことが……
もう何も言えなかった。
どうしたら気がついてもらえるだろうか。
その時、A君は「寒い」と言った。まだ春を迎える冬の終わりの時期だったので、風が吹けば肌寒く感じた。
A君はホテルに戻ってジャケット取ってこようかと思案し出した。
これはチャンスかもしれない。
「絶対とってきた方がいいよ。ここはこの時期寒いよ」
私は強く勧めた。ホテルに戻れば、もしかしたら鏡を見るかもしれない。それに賭けた。
A君はジャケットを取りにホテルに向かった。
どうか、鼻くそがついてることに気がつきますように。そればかり祈っていた。
そして戻ってきたとき、祈るような思いでA君の顔をみたら、あのままだった。
少しだけ乾いていたような感じがした。
今日はこれでずっと一緒に行動なの?
友達も絶対判ってるはずなのに、何も言わない。友達なら言ってやれよと思った。
私はA君の顔を見られなくなった。A君はずっと鼻くそがついたまま観光をしてしまった。
そして別れのとき
「今日は会えてよかった、案内ありがとう」
と、A君が私をみたとき、A君の鼻くそは乾ききっていて固くなっていた。
最後までA君は鼻くそとともに観光をしたのだった。
あっぱれ。
A君もそのうちの一人で、かっこいい雰囲気のする、いい大学の学生さんだった。私と同じ時期に留学するからと連絡先を交換していた。
留学中、私の滞在している町にA君は中国人の友達と遊びに来た。
好きとかそういう感情は一切なかったけど、覚えていてくれたことは嬉しかった。私は忘れてたから。
英会話学校で一緒にクラスをとってた時はそれなりに楽しかったので、A君の印象はよかった。
遊びに来ると知らされたときは、喜んで町を案内すると張り切っていた。
その日は待ち合わせの時間が朝8時。バスの本数は少なく、バス停まで歩いて30分。目的地まで1時間半と、待ち合わせ時間に間に合わせようとすると、か なり早起きをして家を出なければならなかった。
待ち合わせ場所についたときは、まだ約束の時間まで20分くらいあった。
その間、どこから来るのだろう、久しぶりに会ってなんて挨拶しようとか、色々考えていた。
すると遠くからアジア人らしい男性二人が歩いて来た。
来た!と思って、顔を合わせるのを照れくさく思っていたときだった。
「おはよう。来てくれてありがとう」
A君が手を上げてにこやかに第一声をあげたそのとき、彼の顔をみて私は驚いた。
なんと鼻の穴から、青っぱなのような大きな鼻くそがぶら下がるようについていた。それはもう無視できない光景。
その隣にはA君の友達がいた。A君は私をその人に紹介してくれたのだが、その友達はA君の顔をしっかり見ているのに鼻くそには何も言及しない。
私はどうすればいいのかわからなくなった。そわそわしているとA君は言った。
「言いたいことわかってるよ」
えっ、判ってくれてるの。それってわざとなの? 思わず目をぱちくりした。
「俺、すっかり太ってしまったから、びっくりしたんだろ」
ち、違う。太ったことは認めるが、それよりももっと衝撃的なことが……
もう何も言えなかった。
どうしたら気がついてもらえるだろうか。
その時、A君は「寒い」と言った。まだ春を迎える冬の終わりの時期だったので、風が吹けば肌寒く感じた。
A君はホテルに戻ってジャケット取ってこようかと思案し出した。
これはチャンスかもしれない。
「絶対とってきた方がいいよ。ここはこの時期寒いよ」
私は強く勧めた。ホテルに戻れば、もしかしたら鏡を見るかもしれない。それに賭けた。
A君はジャケットを取りにホテルに向かった。
どうか、鼻くそがついてることに気がつきますように。そればかり祈っていた。
そして戻ってきたとき、祈るような思いでA君の顔をみたら、あのままだった。
少しだけ乾いていたような感じがした。
今日はこれでずっと一緒に行動なの?
友達も絶対判ってるはずなのに、何も言わない。友達なら言ってやれよと思った。
私はA君の顔を見られなくなった。A君はずっと鼻くそがついたまま観光をしてしまった。
そして別れのとき
「今日は会えてよかった、案内ありがとう」
と、A君が私をみたとき、A君の鼻くそは乾ききっていて固くなっていた。
最後までA君は鼻くそとともに観光をしたのだった。
あっぱれ。