各駅ごとに止まりながらダウンタウンの中を路面電車が走る。
観光客が見れば、町と電車が絵になる光景。
地元の者には、交通手段の他ならない。
僕はその時窓際に座っていた。
隣の席はまだ空いている。
そんなに混んでいない電車の中。
次の駅が近づくと駅にまとまった人の塊が見える。
かなりの人がこの電車を待っていた。
電車が止まりドアが開くと、開いてる席を求めて人がなだれ込む。
僕の隣にも白髪交じりの黒人のおじさんが、軽く会釈をするかのように座った。
おじさん座るや否や、身を乗り出して、僕に少し近寄りながら窓の外にいる、同じく黒人の女性を見て手を振っていた。
見送ってくれた友達、または家族なんだろうか。
でもその女性はどこかきょとんとして目線がこっちを見ているようで目に入っていない。
おじさんは強く手を振りながら僕に言った。
「一緒に手を振ってくれないか」
相手が気付いてないので注意を引こうと手伝ってほしかったみたいだ。
僕はちょっと躊躇いながらも女性を見つめて手を横に振った。
電車がゆっくりと動き出した。
そして女性がこっちを見た。
僕とも目が合ったような気がした。
おじさんは必死にまだ手を振っている。
でも反応がない。
もしかしたら窓が反射して、外側から中が見えなかったのかもしれない。
駅を離れその女性の姿は見えなくなった。
手を振り返してもらえなかったおじさんが少しかわいそうに思えた。
そこで僕は声をかけてみた。
「おじさんの知り合いの方ですか」
するとおじさんは言った。
「いや、全然知らない人。私は手を振るのが好きなんです」
観光客が見れば、町と電車が絵になる光景。
地元の者には、交通手段の他ならない。
僕はその時窓際に座っていた。
隣の席はまだ空いている。
そんなに混んでいない電車の中。
次の駅が近づくと駅にまとまった人の塊が見える。
かなりの人がこの電車を待っていた。
電車が止まりドアが開くと、開いてる席を求めて人がなだれ込む。
僕の隣にも白髪交じりの黒人のおじさんが、軽く会釈をするかのように座った。
おじさん座るや否や、身を乗り出して、僕に少し近寄りながら窓の外にいる、同じく黒人の女性を見て手を振っていた。
見送ってくれた友達、または家族なんだろうか。
でもその女性はどこかきょとんとして目線がこっちを見ているようで目に入っていない。
おじさんは強く手を振りながら僕に言った。
「一緒に手を振ってくれないか」
相手が気付いてないので注意を引こうと手伝ってほしかったみたいだ。
僕はちょっと躊躇いながらも女性を見つめて手を横に振った。
電車がゆっくりと動き出した。
そして女性がこっちを見た。
僕とも目が合ったような気がした。
おじさんは必死にまだ手を振っている。
でも反応がない。
もしかしたら窓が反射して、外側から中が見えなかったのかもしれない。
駅を離れその女性の姿は見えなくなった。
手を振り返してもらえなかったおじさんが少しかわいそうに思えた。
そこで僕は声をかけてみた。
「おじさんの知り合いの方ですか」
するとおじさんは言った。
「いや、全然知らない人。私は手を振るのが好きなんです」