アメリカンの夫と日本人の妻は猫を多数飼っていた。
そのうちの一匹をそのアメリカンの夫が動物病院へと連れてった。
もちろんそこはアメリカの動物病院だ。
連れて行かれた猫は非常に怯え、震えていた。
獣医の助手がケージから丁寧にその猫を出して、優しく抱きかかえた。
猫は怖さで体が強張り固まって動けなかった。
台の上に乗せ、体重を測る助手が、夫に問いかけた。
「猫の名前は?」
夫は恐怖に怯えている猫を心配そうに見ながら答えた。
「ハマチ」
それが猫の名前だった。
何も考えずに、妻が感性だけでそんな名前にしてしまった。
はっきり言って、魚のハマチだ。
アメリカ人の中には、寿司が好きな人もいて、「ハマチ」が通じる事があるが、大概は意味が良くわからず、また聞きなれないその音に訊き返す人が多い。
助手は猫の体重を夫にとりあえず知らせる。
「10 pound」
大体4.5kgというところだった。
猫の平均的重さとしてはそれくらいだった。
そして夫も相槌を打ったとき、また助手が質問した。
「それで、猫の名前は?」
やっぱり聞きなれないのだろう。
よくあることなので夫も気にせず言った。
「ハマチ」
その時、固まっていた猫の呪縛が解けたかのように、台から飛び降りようとして、助手は慌てた。
「おお、えっと、10 pound」
動いたせいでまた測り直した感じだった。
猫を押さえながら夫の顔を見てもう一度聞いた。
「猫の名前は?」
集中できないと聞き取りにくいのかもしれない。
「ハマチ」
夫は少しゆっくり目に言ってみた。
助手は不思議そうな顔をして夫を見つめていた。
「10 pound?」
自信なさげに助手が呟き、その後も困惑した表情を向けながら「猫の名は?」と聞く。
「ハマチ……」
「10 pound…… 猫の名は?」
「えっ? ハマチ……」
「10 pound…… 猫の名は?」
「? えっと、ハマチ?」
「? 10 pound…… 猫の名は?」
「?」
「?」
あまりにもしつこいそのやり取りに、お互い顔を見合わせ沈黙が続く。
でも夫は猫の名前を根気よく伝える。
「ハマチ……」
「?? 10 pound…… 猫の名は?」
助手も何度も繰り返す。
夫はその時やっと気が付いた。
猫の名前が助手には「ハウマッチ(体重はいくら?)」と聞こえていた。
そのうちの一匹をそのアメリカンの夫が動物病院へと連れてった。
もちろんそこはアメリカの動物病院だ。
連れて行かれた猫は非常に怯え、震えていた。
獣医の助手がケージから丁寧にその猫を出して、優しく抱きかかえた。
猫は怖さで体が強張り固まって動けなかった。
台の上に乗せ、体重を測る助手が、夫に問いかけた。
「猫の名前は?」
夫は恐怖に怯えている猫を心配そうに見ながら答えた。
「ハマチ」
それが猫の名前だった。
何も考えずに、妻が感性だけでそんな名前にしてしまった。
はっきり言って、魚のハマチだ。
アメリカ人の中には、寿司が好きな人もいて、「ハマチ」が通じる事があるが、大概は意味が良くわからず、また聞きなれないその音に訊き返す人が多い。
助手は猫の体重を夫にとりあえず知らせる。
「10 pound」
大体4.5kgというところだった。
猫の平均的重さとしてはそれくらいだった。
そして夫も相槌を打ったとき、また助手が質問した。
「それで、猫の名前は?」
やっぱり聞きなれないのだろう。
よくあることなので夫も気にせず言った。
「ハマチ」
その時、固まっていた猫の呪縛が解けたかのように、台から飛び降りようとして、助手は慌てた。
「おお、えっと、10 pound」
動いたせいでまた測り直した感じだった。
猫を押さえながら夫の顔を見てもう一度聞いた。
「猫の名前は?」
集中できないと聞き取りにくいのかもしれない。
「ハマチ」
夫は少しゆっくり目に言ってみた。
助手は不思議そうな顔をして夫を見つめていた。
「10 pound?」
自信なさげに助手が呟き、その後も困惑した表情を向けながら「猫の名は?」と聞く。
「ハマチ……」
「10 pound…… 猫の名は?」
「えっ? ハマチ……」
「10 pound…… 猫の名は?」
「? えっと、ハマチ?」
「? 10 pound…… 猫の名は?」
「?」
「?」
あまりにもしつこいそのやり取りに、お互い顔を見合わせ沈黙が続く。
でも夫は猫の名前を根気よく伝える。
「ハマチ……」
「?? 10 pound…… 猫の名は?」
助手も何度も繰り返す。
夫はその時やっと気が付いた。
猫の名前が助手には「ハウマッチ(体重はいくら?)」と聞こえていた。