女には恋人がいた。
飛行機に乗らないと会いに行けないほど遠い所に。
遠距離恋愛だった。
その時代はまだインターネットがなく、連絡の手段は手紙や電話のみだった。
しかし、手紙はやり取りに時間がかかり、電話は費用が高くなってしまう。
会いに行くにも遠すぎて、まとめて取れる休みもお金もなかった。
頻繁に出していた手紙も、どんどん回数が減っていく。
そのうち女の前に、新しい男が現れた。
遠くに彼がいるとわかっていても、色々と世話を焼いてくる男が側に来ると、女は気持ちの迷いがでてしまった。
その男に優しくされるとあまりにも心苦しく、二股をかけてるようで罪悪感が芽生える。
自分には遠距離恋愛で彼がいると説明するが、その男はアプローチをやめなかった。
その男も本気で女に好意を抱いていた。
女は遠距離恋愛の彼からの手紙を待つも、返事がなかなか来なくなり、どんどん二人の間が離れていってるように感じだした。
その間に身近にいる男はどんどんと距離を縮めてきた。
そのうち女はその男に心が傾いてしまった。
そしてとうとう、遠距離恋愛の彼と別れる決心をするのだった。
女は手紙を出す。
これ以上は続けられない。
他に好きな人ができてしまった。
まさに遠距離恋愛のよくあるなれの果て。
振られるか、振るか、自然消滅かの違いだけで、結局は別れてしまう。
遠距離恋愛の彼は、女からその手紙を読むや否やすぐに電話をかけてきた。
「どういうことだ」
「ごめんなさい」
女は謝る事しかできない。
「俺は諦めない。お前が好きだ。結婚したい」
「だったら、どうしてすぐにそういってくれなかったの? もっと早く言ってくれたら、私もそっちへ行く覚悟がついた。でもあなたはそれを避け、時には私がどんなに手紙を書いても数か月も連絡をくれなかったじゃない」
男は黙り込む。
男にとっても、空白のあの時期は自分から遠距離恋愛をやめようかと悩んでいた時でもあった。
しかし、それを思い直してそろそろ結婚の事を考えた時だった。
その間に女は新しい男と出会ってしまった。
全てはタイミングがそうさせてしまった。
「お願いだ。もう一度考えてくれ。俺はお前しか見えない。お前はきっと俺の元に戻ってくる」
男の強気なその発言を女は冷ややかに聞いていた。
「ごめん。無理」
「愛してるんだ。だから……」
それでも女は考え直さなかった。
今更、彼の元へなど戻れないし、気持ちはアプローチしてきた男へ完全に向いてしまった。
そのアプローチしてきた彼にはすでに結婚を前提に付き合って欲しいと言われている。
そこで女は気持ちが固まった。
電話は、結局どちらも反発し合うまま後味の悪さを残して切った。
すっきりした別れ方ではなかったが、女にはすでに終わった事になり、新しい男との付き合いが始まった。
その数日後、すぐさま遠距離恋愛だった彼からの手紙が届いた。
出会った頃の思い出、ずっと好きだと思いを綴っている。
新しい男とは絶対に上手く行くはずがないとまで書いてあった。
『俺はいつまでも君を思い続ける。この先もずっと君が戻ってくるのを待ってる。だから君は俺の事をずっとずっと考え続けるだろう。そして必ず俺の所に戻ってくるはずだ。愛してる。いつまでも待っている』
熱く思いを語られ、女は心苦しくなってしまう。
ここまで愛されたら、女の思いは複雑だった。
ただ自分が他に好きな人が出来てしまった事で、良心の呵責が強くなるだけだった。
でも最後の追伸の一言で女は「ん?!」となった。
『PS あまり長くも待てないから返事は早くな』
その矛盾した追伸に思わず突っ込みを入れてしまう。
いつまでも待つのか、待てないのか、どっちやねん!
女は、便箋と封筒を取り出し、さようならの返事をすぐさま送った。
飛行機に乗らないと会いに行けないほど遠い所に。
遠距離恋愛だった。
その時代はまだインターネットがなく、連絡の手段は手紙や電話のみだった。
しかし、手紙はやり取りに時間がかかり、電話は費用が高くなってしまう。
会いに行くにも遠すぎて、まとめて取れる休みもお金もなかった。
頻繁に出していた手紙も、どんどん回数が減っていく。
そのうち女の前に、新しい男が現れた。
遠くに彼がいるとわかっていても、色々と世話を焼いてくる男が側に来ると、女は気持ちの迷いがでてしまった。
その男に優しくされるとあまりにも心苦しく、二股をかけてるようで罪悪感が芽生える。
自分には遠距離恋愛で彼がいると説明するが、その男はアプローチをやめなかった。
その男も本気で女に好意を抱いていた。
女は遠距離恋愛の彼からの手紙を待つも、返事がなかなか来なくなり、どんどん二人の間が離れていってるように感じだした。
その間に身近にいる男はどんどんと距離を縮めてきた。
そのうち女はその男に心が傾いてしまった。
そしてとうとう、遠距離恋愛の彼と別れる決心をするのだった。
女は手紙を出す。
これ以上は続けられない。
他に好きな人ができてしまった。
まさに遠距離恋愛のよくあるなれの果て。
振られるか、振るか、自然消滅かの違いだけで、結局は別れてしまう。
遠距離恋愛の彼は、女からその手紙を読むや否やすぐに電話をかけてきた。
「どういうことだ」
「ごめんなさい」
女は謝る事しかできない。
「俺は諦めない。お前が好きだ。結婚したい」
「だったら、どうしてすぐにそういってくれなかったの? もっと早く言ってくれたら、私もそっちへ行く覚悟がついた。でもあなたはそれを避け、時には私がどんなに手紙を書いても数か月も連絡をくれなかったじゃない」
男は黙り込む。
男にとっても、空白のあの時期は自分から遠距離恋愛をやめようかと悩んでいた時でもあった。
しかし、それを思い直してそろそろ結婚の事を考えた時だった。
その間に女は新しい男と出会ってしまった。
全てはタイミングがそうさせてしまった。
「お願いだ。もう一度考えてくれ。俺はお前しか見えない。お前はきっと俺の元に戻ってくる」
男の強気なその発言を女は冷ややかに聞いていた。
「ごめん。無理」
「愛してるんだ。だから……」
それでも女は考え直さなかった。
今更、彼の元へなど戻れないし、気持ちはアプローチしてきた男へ完全に向いてしまった。
そのアプローチしてきた彼にはすでに結婚を前提に付き合って欲しいと言われている。
そこで女は気持ちが固まった。
電話は、結局どちらも反発し合うまま後味の悪さを残して切った。
すっきりした別れ方ではなかったが、女にはすでに終わった事になり、新しい男との付き合いが始まった。
その数日後、すぐさま遠距離恋愛だった彼からの手紙が届いた。
出会った頃の思い出、ずっと好きだと思いを綴っている。
新しい男とは絶対に上手く行くはずがないとまで書いてあった。
『俺はいつまでも君を思い続ける。この先もずっと君が戻ってくるのを待ってる。だから君は俺の事をずっとずっと考え続けるだろう。そして必ず俺の所に戻ってくるはずだ。愛してる。いつまでも待っている』
熱く思いを語られ、女は心苦しくなってしまう。
ここまで愛されたら、女の思いは複雑だった。
ただ自分が他に好きな人が出来てしまった事で、良心の呵責が強くなるだけだった。
でも最後の追伸の一言で女は「ん?!」となった。
『PS あまり長くも待てないから返事は早くな』
その矛盾した追伸に思わず突っ込みを入れてしまう。
いつまでも待つのか、待てないのか、どっちやねん!
女は、便箋と封筒を取り出し、さようならの返事をすぐさま送った。