「さて、ひかり。片付けが済んだら、今度は私が庭を案内しよう」

「え? いいの? 仕込みとかあるんじゃないの?」

「猪俣様への手土産の栗羊羹が、今宵の甘味なのだ。あとは冷やしておくだけだし、私もひかりと少し話がしたい」


ニッコリと微笑まれて、その綺麗な瞳に吸い込まれそうになった。
初めてお屋敷に来てから今日までの三日間は、怒涛の日々だったからあまり意識する余裕がなかったけれど、雨天様には人間離れした美しさがある。


銀糸のような髪、涼しげなのに力強い切れ長の瞳、高い鼻。
よく見れば右の瞳の下には小さな泣きぼくろがあって、それがまた雨天様の秀麗さを際立たせているような気がした。


「私では不服か?」

「ううん、全然! えっと……よろしくお願いします」

「ああ」


私が頭を小さく下げると、雨天様が瞳をそっと緩めた。
切れ長の双眸が柔らかな優しさを灯し、やっぱり吸い込まれてしまいそうな気持ちになる。


「でしたら、片付けは我々がいたしますので、おふたりはお庭へ」


そんな私を余所にギンくんが笑顔で提案してくれ、私は片付けもさせてもらえないまま、雨天様に促されて……。
雨天様を追って、玄関へと向かうことになった。