大通りには、コンビニやドラッグストアが並んでいる。
ほとんどのスーパーが閉まり始めるような午後九時前、Tシャツにデニムという軽装の私が持っているのは、差している傘と財布とスマホだけ。


観光客とは明らかに違う格好は浮いているようにも思えたけれど、青く光る看板を目指す。
目的地はもうすぐそこ。
という時、バスから降りてくる人たちの会話が耳に飛び込んできた。


「明日は、金沢城やね! 楽しみやわー!」

「二十一世紀美術館もやろ?」

「ホテルに戻ったら行き方調べなあかんね」


ゾロゾロとバスから降りてくる乗客は何人もいるのに、ひと際声が響いていたのは二十代後半くらいのふたり組の関西弁の女性。
弾けるような笑顔は、今の私の心の中とは正反対で、思わず目を逸らしたくなってしまう。


「やっぱり、ひがし茶屋街にも行かへん? ここまで来たら、行くべきやと思うねん」

「うーん、帰りの新幹線の時間もあるから……」

「金箔ソフトは食べておきたいやん!」

「そういえば、食べたいって言ってたもんね。ほんなら、行こうか!」


力説する女性に、友人らしいもうひとりの女性が賛成している。
その楽しそうな姿を見て、ふと思い出したのは、おばあちゃんと最後に遊びに行ったのがひがし茶屋街だったこと。