「我々ができるのは、あくまで傷を癒やすお手伝いまでなのです。それなのに、私の判断が間違っていたために、その者の欲が深まって……。悲しいことに、自らの手で努力をすることを諦めてしまったのです」
膝で抱えている私の荷物をギュッと握り、瞳を伏せる。
そんなコンくんの気持ちをすべて理解できるわけじゃないのに、私まで心が痛む。
「居心地が良過ぎるというのもいけないのだと、あの時に学びました……」
「そっか……」
「結局、屋敷に留まらせることはできず、傷を癒やせないまま忘却の術をかけることになったのです」
「……その人って、どうなったの?」
「屋敷でのことを忘れたおかげでしょう。自身の手で努力をして、妻の忘れ形見であるふたりの可愛い子どもを守り、天寿を全ういたしました」
ためらいながらも尋ねると、コンくんは予想に反して微笑んだ。
それは、表情も答えも悲しいものなんかじゃなかった。
「まぁ……悲しいことに、最後まで傷を抱えたままでしたが、雨天様は『これでよかったのだ』とおっしゃっていました。きっと、私を慰めてくださっただけなのだと思いますが……」
「そんなことないと思うよ」
「え?」
自嘲気味に付け足された最後の言葉を否定すれば、コンくんが不思議そうに小首を傾げた。
無言のコンくんが続きを待っているのは一目瞭然で、私は瞳を緩めて再び口を開いた。
膝で抱えている私の荷物をギュッと握り、瞳を伏せる。
そんなコンくんの気持ちをすべて理解できるわけじゃないのに、私まで心が痛む。
「居心地が良過ぎるというのもいけないのだと、あの時に学びました……」
「そっか……」
「結局、屋敷に留まらせることはできず、傷を癒やせないまま忘却の術をかけることになったのです」
「……その人って、どうなったの?」
「屋敷でのことを忘れたおかげでしょう。自身の手で努力をして、妻の忘れ形見であるふたりの可愛い子どもを守り、天寿を全ういたしました」
ためらいながらも尋ねると、コンくんは予想に反して微笑んだ。
それは、表情も答えも悲しいものなんかじゃなかった。
「まぁ……悲しいことに、最後まで傷を抱えたままでしたが、雨天様は『これでよかったのだ』とおっしゃっていました。きっと、私を慰めてくださっただけなのだと思いますが……」
「そんなことないと思うよ」
「え?」
自嘲気味に付け足された最後の言葉を否定すれば、コンくんが不思議そうに小首を傾げた。
無言のコンくんが続きを待っているのは一目瞭然で、私は瞳を緩めて再び口を開いた。