「よかったな、ギン」

「え?」


コンくんと私が声を重ねると、雨天様がどこか照れ臭そうにしているギンくんを見てから口を開いた。


「今朝のお味噌汁は、ギンが作ったのだ。出汁も上手く取れているだろう」

「ええっ! それはまったく気がつきませんでした!」

「ほらな、ギン。私の言う通りだっただろう。コンが間違えるくらい、お前の腕は上がったのだよ」


優しく瞳を緩める雨天様は、とても嬉しそうだった。
それは「ありがとうございます」と小さく言ったギンくんも同じで、照れ臭そうにしながらも笑顔を隠せていない。


「うぅっ……不覚にございます……。このコンが、雨天様とギンのお料理の味を間違えるなど……!」

「それだけギンが頑張ったということだ。それに、コンは今日まで一度も間違えたことはなかろう。私は、コンの舌を信頼しているよ」

「雨天様……!」


落ち込んだ様子だったコンくんは、雨天様の言葉ですぐに満面の笑みになった。
三人とも、それぞれに喜びを感じているのがよくわかって、私まで心が弾んだ。


久しぶりの賑やかな朝食は、子どもの頃におばあちゃん家で過ごした日々の思い出の中にいるようで、なんだか楽しかった。
それなのに、心の片隅では少しの切なさを感じていた――。