「土鍋でご飯を炊いたの?」

「ここには、炊飯器なんて便利な物はありませぬ。でも、味は格別ですよ」


私の疑問の先まで読み取ってくれたギンくんが、ニッコリと笑った。
コンくんとギンくんは、性格はあまり似ていないような気がするけれど、外見は双子だけあってそっくりで、特に笑顔は一瞬見分けられなくなりそうなほど瓜ふたつだった。


「それをお持ちいただければ、客間で支度をしているコンが説明すると思います」


出汁の香りが充満している中、土鍋の傍に立つと炊きたてのご飯特有の匂いがした。
お腹が刺激され、今にも鳴ってしまいそう。


そういえば、おばあちゃんも時々、土鍋を使ってご飯を炊いてくれたことがあった。
確かに、ああいう時のご飯はいつも以上においしかったような記憶がある。


「私たちもすぐに行くから頼む」

「うん」


雨天様の言葉に、子どものお使いよろしく張り切った。
とはいえ、ただ土鍋を運ぶだけだから、その意気のやり場がないことにこのあとすぐに気づくのだけれど。


「あっ! ひかり様、おはようございます。配膳など、私がいたしますのに……」


その上、客間に行くとコンくんからは、慌てて制されてしまい、苦笑するしかなかった。