「だが、そもそもお客様と触れ合うということ自体、私ですら滅多にないからな。それに、ひかりがここで長く過ごすことがないように、ひかりのことも早々に解決すると約束しよう。だから、案ずることはない」

「うん、わかった」

「いい子だ」


これは、雨天様の口癖なんだろうか。
子ども扱いされているようで複雑な気持ちにもなるけれど、不思議と雨天様の口から聞くのは嫌じゃなかった。


そういえば、昔も言われたことがあるような気がする。
もしかしたら、幼い頃にでも両親や祖父母に言われていたのかもしれない。
もう思い出せないものの、なんだかそんな風に思っていた。


「日が暮れてきたな。荷物は、明日取りに行きなさい」

「え、でも、着替えとか……」

「着替えなら、どこかに浴衣があるはずだ。コンに用意させよう。ギンは風呂に案内してやりなさい」

「はい」


戸惑う私を余所に、コンくんとギンくんは雨天様の言葉に返事をし、ギンくんが私を見た。
「ひかり様、こちらです」と言われてしまい、選択権が消えてしまったことを自覚する。


仕方なくギンくんについて行けば、ヒノキで造られた広い浴槽がある浴室に誘われ、その大きさに目を見張った。
驚くことはまだまだあるということを知らない私は、贅沢な空間に少しだけ戸惑いながらも開き直ることにして、ひとまず温かい湯船に身を沈めた――。