「よい。私が説明しよう」


雨天様は息を吐くと、私を見た。
それから、おもむろに開口した。


「私は、ここから出ることができないのだ」

「え?」


じゃあ、ずっとここにいるの?


間髪を容れずに浮かんだ疑問は、なんとか喉元で留めた。
なんとなく、安易に尋ねてはいけないような気がしたから。


だけど、雨天様は特に気にする素振りもなく微笑み、縁側に視線を遣った。


「私が持つ力は、ただひとつ。雨を降らせることだけなのだ」

「え? でも、さっき守護の術を……」

「あんなもの、神の力とは関係ない。神というのは、等しく守護の力を持っているし、あれくらいのことは生まれたばかりの神の子でもできる」


神様の子どもなんていまいち想像できないけれど、今はそんなことは問題じゃない。
私が想像していたよりもずっと、神様というのは不便なものなのだろうか。


私の思考が伝わったようで、雨天様は「まぁそうだな」と苦笑を漏らした。
考えていることを読まれるというのは、こういう時に限っては悪くないのかもしれない。