「さきほどのような形が、お茶屋敷にいらしたお客様のあるべき去り方なのです」


雨天様とギンくんがテーブルの上を片付け、コンくんが玄関にかけてあるという暖簾をしまったあと、再び客間に全員が揃った。
そして、例によって雨天様の命令で、コンくんが説明をしてくれることになった。


「光って消えるのが?」

「いいえ、消えると言うと少し語弊があります。我々の前からは消えましたが、お客様自身が消えるのではなく、あるべき場所に帰るのです。例えば、さきほどのお客様は恐らく主の魂がある場所へ、死んだ者なら天国か地獄へ……という風に」

「どこに行くかは、コンくんたちはわかるの?」

「いいえ。それは、我々が知るべきことではないのです。ただし、人間のお客様の場合にはわかります」


コンくんは、「ひかり様のように」と笑顔で付け足し、ギンくんを見たあとで視線を私に戻した。


「ひかり様は、記憶こそなかったはずですが、きちんとご自身でお帰りになっています。私とギンはそっとその後をつけ、ひかり様が家の中に入ったあとで記憶を消す術をかけました」

「そういえば、ここから帰った時のことはまったく覚えてないんだよね」

「それが普通なのです。むしろ、それだけしか忘れていないのは奇跡だと思ってください」


コンくんは気まずそうに笑うと、雨天様をチラリと見た。
雨天様は私たちの話は聞いているけれど、口を挟もうとする様子はない。