「もうすぐここにお客様がやって来る。この世の者ではない、まったく別の命だ。ひかりはここにいてよいが、決してその客に触れてはならない。わかったか?」

「は、はい……」


あまりに真剣な面持ちを向けられて、思わず喉をゴクリと鳴らして敬語で返事をしていた。
すると、雨天様は瞳をそっと緩めた。


「触れさえしなければ、なにも危険なことはない。ただ、お前はお客様がお帰りになるまで私の隣にいなさい」

「……わかった」

「いい子だ。では、こちらにおいで」


言われるがまま立ち上がって雨天様のもとに行くと、雨天様は指先で私の額にそっと触れ、よくわからない言葉を囁いた。
一瞬だけ光ったような気がしたけれど、その光はすぐに消え、代わりに額がほんのりと温かくなった。


「では、コン。ひかりを頼む」

「かしこまりました」

「え?」

「心配することはない。お客様に出す甘味を用意したら、すぐにここに戻って来る。それまで、コンの言う通りにしておれ」

「大丈夫ですよ、ひかり様。雨天様がお戻りになられるまで、コンがお傍におりますゆえ。それに、ひかり様は雨天様に守られておりますから、なんの心配もございません」

不安をあらわにした表情で雨天様を見た私に、雨天様とコンくんが笑顔を向けてくれる。
ギンくんも、優しい面持ちで頷いていた。