おばあちゃんの家は古い日本家屋で、いつからか建てつけが悪くなっている玄関の引き戸は開閉にコツがいる。
私はいつも最初の一日だけ手こずってしまって、門の前で出迎えてくれるおばあちゃんはそんな私に手を貸すことはなく、どこか楽しそうに『頑張って』なんて言いながら笑っていた。
今日は、隣で見守ってくれるおばあちゃんは、どこにもいなくて。
私がどれだけ時間を掛けてしまっても、それでももしこの気まぐれな引き戸を開けられなかったとしても、助けてくれる人もいない。
ガタガタギシギシと不規則な音を立てる引き戸に、時々苛立ちを感じながらも、なんとか開けられた時にはわずかに安堵していた。
折り畳み傘からは雨粒が落ち続けていたせいで、引き戸の前の石畳の一部分だけが色濃くなっている。
ガラガラとドアを滑らせると、しん、と静まり返った玄関と廊下が視界に入ってきた。
いつも家の中は明るかったけれど、電気もおばあちゃんの笑顔もないと昼間でもこんなにも暗いのかと気づかされてしまう。
少し前に二十歳になったというのに、まるでどこか知らない場所にひとりできてしまった幼い子どものように心細くなって……。
慣れた場所にようやく辿り着いたはずなのに、一瞬だけ足が竦んだみたいなためらいを覚えた。
ハッとして、息をゆっくりと吐く。
「……お邪魔します」
そして、少し悩んだあと、遊びに来た初日の時と同じセリフを紡いでから靴を脱いだ。
私はいつも最初の一日だけ手こずってしまって、門の前で出迎えてくれるおばあちゃんはそんな私に手を貸すことはなく、どこか楽しそうに『頑張って』なんて言いながら笑っていた。
今日は、隣で見守ってくれるおばあちゃんは、どこにもいなくて。
私がどれだけ時間を掛けてしまっても、それでももしこの気まぐれな引き戸を開けられなかったとしても、助けてくれる人もいない。
ガタガタギシギシと不規則な音を立てる引き戸に、時々苛立ちを感じながらも、なんとか開けられた時にはわずかに安堵していた。
折り畳み傘からは雨粒が落ち続けていたせいで、引き戸の前の石畳の一部分だけが色濃くなっている。
ガラガラとドアを滑らせると、しん、と静まり返った玄関と廊下が視界に入ってきた。
いつも家の中は明るかったけれど、電気もおばあちゃんの笑顔もないと昼間でもこんなにも暗いのかと気づかされてしまう。
少し前に二十歳になったというのに、まるでどこか知らない場所にひとりできてしまった幼い子どものように心細くなって……。
慣れた場所にようやく辿り着いたはずなのに、一瞬だけ足が竦んだみたいなためらいを覚えた。
ハッとして、息をゆっくりと吐く。
「……お邪魔します」
そして、少し悩んだあと、遊びに来た初日の時と同じセリフを紡いでから靴を脱いだ。