「さて、どうしたものか」

「そうですねぇ」

「はい! コンに提案がございます!」


悩ましげに切り出した雨天様と、同じような顔で声を漏らしたギンくんに反し、コンくんの声音はやけに明るかった。
雨天様は、「なんだ、コン」と落ち着いた口調で尋ねた。


「ひかり様には、しばらくこちらにいていただくのはいかがでしょう?」

「は?」

「コン、それはいけませぬ」


コンくんの提案に、首を傾げた雨天様を見て、ギンくんがすかさずたしなめる。
すると、コンくんは不満げにギンくんを見た。


「でも、ギンも見たでしょう? 私はきちんと記憶を消したはずなのに、術は効かなかった。忘却の術は、同じ者に何度も使えません。その上、この術は私しか使えないじゃありませんか」

「でも……」

「ひかり様がここを見える間にひとりにする方が、よほど危険です。だったらいっそ、我々で守って差し上げればよいのです。そのうちにひかり様の心も癒え、我々のことも見えなくなるでしょう」


お調子者っぽいと思っていたコンくんは、意外にもとてもしっかりしているようで、ふたりはコンくんの話に耳を傾けていた。
なんとなく選択権がないというのを悟った私は、あまり穏やかじゃなさそうな単語が出たことにわずかな不安を覚えながらも、状況を見守ることに徹する。