「ひかりは、本当においしそうに食べるな」

「だって、本当においしいんだもん」


雨天様に笑顔を返し、ふた口目、三口目……と、優しい甘さを身に纏ったどら焼きを堪能する。
栗が入っているところはあんことの相性が抜群で、このペースならあっという間に完食してしまいそう。


「雨天様のどら焼きも、あんみつに負けず劣らず絶品なのですよ」

「私はこれが大好物なのです! 雨天様、おかわりしてもよいですか?」

「好きなだけ食べるがよい」


おかわりを許してもらえたコンくんは、テーブルの真ん中に置いてあったお皿から両手にどら焼きを取り、ふたつを交互に食べ進めた。
大好物なのはよくわかるけれど、それにしても息継ぎも忘れるかのような勢いで食べる姿はなかなか衝撃的だった。


「ひかりも遠慮せずに食べてよいぞ」

「あ、うん。じゃあ、もうひとついただきます」


コンくんほどじゃないけれど、早々に完食した私もおかわりをもらうことにする。
ふたつ目もまったく飽きることなく口に運び、結局あっという間に食べ切ってしまった。


雨天様とギンくんがふたつ目を食べ終える頃、コンくんは五個目のどら焼きを完食し、満足そうに「満腹です」と笑っていた。
私は、口腔に残っていた甘味をほうじ茶で中和させながら、コンくんの姿に笑みを零していた。