温かいほうじ茶とともに並べられたのは、ふんわりとしたフォルムのどら焼き。
さっき私をここに誘ってくれた香りの正体がこれだったのだと気づくまで、そう時間は掛からなかった。


昨夜のあんみつに使用したものと同じ小豆を時間を掛けて炊き、丁寧に焼き上げた生地に挟んだものに、栗がひとつ入っているのだとか。
焼きたてじゃないのに、鼻腔をくすぐる香りに誘惑されたお腹の虫が反応してしまいそう。


「さぁ、まずはいただきましょう」


ギンくんの声に、みんなが頷く。
手を合わせた雨天様に続いて、コンくんとギンくんも両手を合わせたから、私もそれに倣うようにした。


「いただきます」


雨天様の声を機に、それぞれが同じ言葉を紡ぐ。
真っ先にどら焼きにかぶりついたのはコンくんで、ギンくんはお行儀よくひと口頬張り、雨天様はなにやら出来栄えを観察しているみたい。


そんな三人を横目に、期待値が高まり切った私もどら焼きを口に運んだ。
柔らかな感触が歯に当たり、生地をそっと噛み切れば、しっとりとしたあんこの味が口いっぱいに広がっていく。


「おいしい!」


昨夜とまったく同じ感想しか言えなかったけれど、それが一番端的で的確な言葉だったはず。
笑顔の私を、三人は微笑ましそうに見てきた。