「とにかく、ひかりを外へ」

「あの、雨天様! お言葉ではございますが、このままひかり様を帰してもまた同じことになるのでは?」

「……どういうことだ?」

「ひかり様は、自らの力でここに来られました。術はきちんとかかっていたので、ご自身で解いたということはないでしょう。となれば、ひかり様は心の傷が癒えなかったのではありませんか?」


コンくんの言葉に、雨天様は眉間のシワを深くした。
三人の視線が私に向けられ、なにかを探るような六つの瞳が突き刺さる。


「確かに、コンの言う通りかもしれませぬ。私も、人間のお客様は久しぶりなので、確信はありませぬが……」

「どちらにしても、このままお返しするわけには……」

「……仕方ない。まずは話すことにするか」


程なくして、雨天様はため息混じりに頷き、納得したようにそう言った。
どこか居心地が悪くなりそうだった私は、自然と緊張していたようで、ほとんど無意識のうちに安堵の息を吐いていた。


「では、まずはお茶を淹れて参ります」

「ああ、ついでに今朝作ったどら焼きも持っておいで」

「もちろんでございます」


ギンくんは笑みを浮かべると、「雨天様とひかり様はお部屋の方へ」と言い、コンくんとともにどこかに行ってしまった。
残された私たちは、特に会話もないまま客間に足を運んだ。