「どうして……?」

「私たちのことは、話しただろう? ここに来られたということは、記憶に残っているはずだ。ひかりと私たちは、本来なら一緒にいられるはずがないのだ」

「でも……私、昨日のことが気になって……」

「それでも、帰りなさい。ここは、普通の人間が長居できるような場所ではない」


雨天様は、言い終わるとすぐに私の肩に手を添え、「外まで送ろう」と困ったように笑った。
優しい笑みも、やっぱりちゃんと覚えている。


あんみつやお茶とは違う、優しい温もり。
それが雨天様の手や表情や言葉だったことを思い出し、私が求めていたものだったということも確信した。


「あの、雨天様! 私……!」

「あ、雨天様! ……って、ひかり様⁉」


廊下に出ると、コンくんと鉢合わせた。
コンくんも、私を見た途端に目を丸くして、私と雨天様を交互に見た。


「雨天様、どうしてひかり様が⁉」

「コン、お前の術が甘かったのだろう!」

「そ、そんな! コンは、慎重に術をかけ、ひかり様の記憶を消して参りました!」


眉間にシワを寄せている雨天様に、慌てたように首を横に振るコンくん。
その様子を見ていると、私はここに来てはいけなかったのだということを悟らされてしまった。