「あった……」


立派な格子造りの門に、古びた瓦屋根。
昼の空の下で見るお屋敷は、昨夜見たような気がするものとは雰囲気が全然違う。


それなのに、ここだ……という確信がある。
そして、記憶はより鮮明になっていた。


「……お邪魔します」


インターホンも、家人を呼び出せそうなものもない。
控えめに言いながらゆっくりと門を開ければ、見覚えのある景色が現れた。


夢にしては、あまりにもそっくり。
やっぱり、自分で見ていたとしか思えない。


そんなことを思いながら歩みを進める足は、どこか慎重だった。
緊張しているのか、鼓動がやけに大きく鳴っているような気がする。


玄関に辿り着いても誰にも会うことはなく、少しの間ためらった末におもむろに手を伸ばした。
ガラガラと音を立てながら、戸が開いていく。


「お邪魔します……。あの~……誰かいませんか?」


誰の名前も呼ばなかったのは、ここに来て急に不安になってきたから。
記憶は現実のものだと確信はあるはずなのに、もしかしたら不法侵入になるんじゃないかと脳裏に過って、尻込みしそうになっていた。