お腹の虫に急かされて台所に行き、すぐに肩を落とすことになったのは、起床してから三十分が経った頃だった。
冷蔵庫の中は空っぽで、昨日の自分が恨めしくなる。


昨夜、コンビニまで行ったはずなのに、どうして今朝のご飯くらい買っておかなかったのだろう。
もっとも、そもそもなにを買ったのかという記憶すらないのだけれど。


ため息混じりにダメ元で戸棚を開けると、ゼリーカップのようなものが目に入った。
昨日はここを確認しなかったけれど、どうやら両親も親戚もこの戸棚の中まではまだ整理していなかったらしい。


手を伸ばして取ったそれは、あんみつだった。
スーパーなんかでよく見かける安価なものだけれど、とりあえず少しくらいは空腹を満たしてくれるはず。


カップに記載された賞味期限まではまだ一ヶ月もあるし、なんとなく外出する気分にはなれない。
色々な条件が重なって、特に好きではないあんみつを朝食代わりにすることにした。


「いただきます」


物寂しい食卓の前で手を合わせ、銀色のスプーンであんみつを口に運ぶ。
その味に眉をわずかに寄せてしまったけれど、静かな部屋で黙々とスプーンを動かし続けた。


この間食べたあんみつ、おいしかったなぁ……。


半分ほど食べた時、ふと脳裏に過ったのはそんなこと。
ただ、その〝この間〟というのがいつのことなのかは、まったく思い出せなかった。