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瞼を開けると最初に視界に入ってきたのは、見覚えのある天井。
おばあちゃん家の居間にいることはすぐにわかり、ゆっくりと体を起こした。


「いつの間に寝ちゃったんだろう……」


昨夜は、確かコンビニに出かけた。
だけど、なにを買ったのかはおろか、どうやって帰って来たのかも思い出せない。


「お酒とか飲んだっけ?」


サークルやゼミの飲み会には参加するけれど、ひとりで飲むほど好きなわけじゃない。
それでも、おばあちゃんの家に来たことで余計に悲しさを感じたのは事実で、その逃げ道としてアルコールを選んだというのなら頷ける。


ただ、布団から出て向かった食卓にも台所にも、お酒を買ったり飲んだりしたような形跡はなかった。
おばあちゃんは飲まない人だったから、ここには買い置きの酒類はないはず。


「うーん、なんか忘れてるような……。懐かしい夢とか見た気がするんだけど、思い出せないなぁ」

自然とひとり言が落ちていき、静かな部屋で昨夜のことを思い出そうとする。
それなのに、半日ほど前の自分の行動が思い出せなくて奇妙な感覚に陥り、不安を覚えて気持ち悪くなっただけだった。


反面、なんだか心はすっきりしている。
相変わらずおばあちゃんの雰囲気を感じる家にいると悲しくなるのに、なぜか昨日ここに来た時よりも心は落ち着いていた。