「なんだ、泣けるではないか」

「え?」


雨天様の言葉に目を見開いた直後、決壊を失くしたかのように涙が零れ始め、どんどん雫が落ちていった。
私の意思なんて関係なくポロポロと流れていく涙は、まるで大粒の雨のよう。


「ずっと泣きそうな顔をしているのに、泣こうとはしないから、てっきり泣き方を忘れたのかと思ったぞ」


困り顔になった雨天様が、私の傍にゆっくりと近づいてくる。
そのまま右隣に腰を下ろすと、私の頭をそっと撫でた。


「好きなだけ泣いてよい。明日の朝には、すべてが夢になっているから」


後半の言葉の意味はわからなかったけれど、髪に触れた優しい温もりにますます涙が溢れてくる。
その止め方がわからなくて戸惑いもあるのに、大きくて温かい手に甘えるように涙を止めようという努力はしなかった。


おばあちゃんが亡くなった時も、安らかな顔で眠るおばあちゃんと対面した時も、お通夜やお葬式の日も、誰よりもたくさん泣いた。
だけど、きっと、今が一番泣いていると思う。


気づけば左側にも温もりを感じ、狐の姿になったコンくんとギンくんも傍にいることを知った。
ふわふわの毛並みで私を包み込むように、ピタリと寄り添ってくれている。


優しくて、温かくて、どこか懐かしい。
そんな感覚を抱きながら、いつまでもずっと泣き続けていた――。