「神様って、なんでもお見通しなんですか?」

「お前がわかりやすいのだ、ひかり。心を読もうとしなくても、思考が簡単に流れてくる。ここにいれば、私の力で多少は読みやすいものだが、これほど素直に心を見せてくれる者は珍しい」


皮肉を込めるようにあえて敬語で尋ねてみると、雨天様は眉を下げて言い訳染みた言葉を並べ、小さな笑みを見せた。
貶されているような、褒められているような、とても微妙な気持ちになったけれど、不思議と嫌悪感はない。


「気分を害したのなら謝ろう。だが、心が素直というのは、それだけ心が美しいということだ。お前を愛する者に大切にされた証だろう」

「愛する者?」

「家族、恋人、友人……犬や猫も例外ではないが、そういう存在によって無償の愛を与えられると、魂と心が素直になるのだ」


なんだか宗教みたいだな、と少しだけ思うのに、雨天様の言葉はすんなりと耳に入ってくる。
そして、その穏やかな声音はとても心地好かった。


「ひかりにも、心当たりはあるだろう?」


優しい問いかけで脳裏に浮かんだのは、柔和な笑顔。
穏やかな瞳で見つめられていた日々のことが、まるで走馬灯のように頭の中を駆け巡っていく。


「……っ」


次の瞬間、鼻の奥に鋭い痛みが走り、意図せずに熱を持った喉の奥から声にならない声が漏れた。
同時に、頬にもほのかな熱を感じた。