「ひかりは私のことが見えたのだから、お前はここに来る資格があったのだ。いくらコンに呼ばれても、私や屋敷が見えない者は〝気のせい〟で終わってしまうからな」


理由はどうであれ、私には雨天様が見えた。
だから、ここに招き入れてもらえたというのはわかるけれど、そもそもどうしてコンくんの声が聞こえたのだろう。


「声が聞こえる条件は色々あるが、まず〝このひがし茶屋街に深いゆかりがあること〟だ」

「だとしたら、私はその時点で条件に合ってない気もするんだけど……」


私の思考を読み取るように説明してくれた雨天様に、首を捻ってしまう。
考えていることを見透かされてしまうのは慣れてきたけれど、最初の条件からして腑に落ちなかったから。


確かに、ここはおばあちゃんとの思い出の場所だし、金沢に住んでいるわけでもないわりには何度も足を運んでいるとは思う。
だけど、それが〝深いゆかり〟と言えるほどかと考えれば、さすがにそこまでではないはず。


〝ゆかり〟はあるけれど、きっと〝深いゆかり〟じゃない。
おばあちゃんと何度も足を運んだ思い出深い街とはいえ、それならおばあちゃんの家とかの方がもっと思い入れがある。


「そうであろうな。私から見ても、お前はここにそれほど深いゆかりがあるとは思えない」


そんな風に考えていると、雨天様が頷いた。
私は、小さなため息を漏らしてしまう。