それって、やっぱり神様ってこと?


確かに、形容しがたい銀糸のような美しい髪は、染めたようには見えない。
見た目こそ二十代半ばの青年といった感じだけれど、話し方なんて見た目年齢とは遠くかけ離れている。


おまけに、狐になったコンくんとギンくんからは『雨天様』なんて呼ばれているし、そんなふたりの主である。
ここまで見聞きしたことだけでも、充分現実離れしていた。


「それで、ひかり。お前はどうしてここに来た?」

「え? どうしてって……だから、子どもみたいな声に呼ばれて……」

「あれは、コンの声だ。だが、あの声は誰にでも聞こえるものではない」

「そうなの?」


思わず敬語を忘れてしまっていたけれど、雨天様は特に気にする素振りも見せない。
神様って、案外その辺りは大らかなのだろうか。


「ああ。コンが自分の声が聞こえそうな者に向けて話しかけ、それに魂が反応した者だけが聞くことができるのだ。そして、私の姿かこのお茶屋敷を見つけた者だけが、この場に足を踏み入れられる。我々は、その者を客人として迎え入れるのだ」


要するに、コンくんの声を聞いたとしても、ちゃんと順序を踏まなければここには辿り着けない――ということみたい。
私は、ただ声を聞いたあとに光を見つけ、そこに向かって走った……というだけなのだけれど。