「き、狐……?」


驚きで声が震えそうになっている私に、コンくんが尻尾をゆっくりと振る。
ふわふわの毛並みは、とても触り心地がよさそうだ。


「正確には、化け狐といったところです。私とギンはもともと双子の狐でして、不慮の事故で命を落としてしまったあと、この場に魂が引き寄せられたのです。そして、上手く成仏できそうになかったところ、雨天様の神使として受け入れていただくことになりました」

「へぇ……化け狐の神使なんているんだね」


経緯はともかく、私の口から出たのはそんなこと。
他にもっと訊くことはあるはずなのに、思考が上手く働かない。


「神使といっても、その生まれは様々なのです。紙から造られる者もいれば、我々のように魂から生まれる者もいます。これは、作り手の力が関係することもありますが、どちらにせよ神使であることには相違ありません」

「それに、〝どの神使も主のために存在している〟という意味では同じでございます」


コンくんとギンくんは、代わる代わる説明してくれ、「理解していただけましたか?」と言ってもう一度クルンと宙返りをした。
人の姿に戻ったふたりに、また目を見開いてしまう。


「えっと、じゃあ……」


驚きを隠せないまま雨天様をチラリと見れば、彼は私の言いたいことを掬って、「コンから聞いている通りだ」と答えた。