「ひかり、コンとギンをよく見ておれ」


話し方が変だとか、コンくんの冗談に付き合うのが普通なのか……とか。
疑問はそれ以外にもたくさんあったけれど、一番違和感があるのは雨天様なんて呼ばれているこの人。


うっかり私も〝様〟なんて付けているけれど、ここがお店で私がお客さんなら、私が彼のことを様付けで呼ぶのは違和感しかない。
ただ、それを口にする前に、「ひかり様」とコンくんに声を掛けられてしまった。


「よーく見ていてくださいね!」


念を押すような口調に思わず頷くと、コンくんとギンくんは顔を見合わせたあと、後ろにクルリと宙返りをした。
あまりにも綺麗な宙返りを見せられて、自然と『わぁ、上手!』なんて言おうとした時。


「わぁ……へっ⁉」


マヌケな声が落下し、そのまま開いた口が塞がらなくなってしまった。


ふたりの髪が伸びた……? いやいや、そういうレベルの話じゃ……!


「ひかり様、我々が人間ではないことは信じていただけましたか?」


信じるもなにも、私の目の前にいたふたりは淡い栗色のような毛を身に纏い、尖った耳をピクピクさせて仲良く並んでちょこんと座っている。
その姿はどう見ても、狐にしか見えなかった。