「ご馳走様でした」


すっかり空になった器に名残惜しさを感じながらも、スプーンを置いてからしっかりと背筋を伸ばして手を合わせた。
こんなに丁寧に〝ご馳走様〟をしたのは、随分と久しぶりだったかもしれない。


「お粗末様」

「え?」


返ってきた声に前を見れば、綺麗な瞳が私を見つめて微笑んでいた。
真っ直ぐな双眸は、どこか嬉しそうに丸められている。


あんみつに夢中だった私は、いつから見られていたのかすらわからないけれど……。
私の言葉で喜んでくれたことは、すぐに悟った。


「あの、とってもおいしかったです! こんなにおいしいあんみつは初めてで……! 特にあの蜜! ほうじ茶の蜜なんて初めて食べたけど、癖になるおいしさで、止まらなかったです!」

「ひかりの顔を見ていればわかるよ。なぁ、お前たち?」

「はい、もちろんでございます。ギンも私も、ひかり様のお顔を見れば、お気持ちが手に取るようにわかります」

「えぇ、雨天様。ひかり様は、雨天様特製のあんみつを大層気に入られたようです。雨天様の弟子として、大変誇らしい気持ちでございます」


三人それぞれの言葉を返してくれたことに、心が少しだけくすぐったくなる。
照れ臭いような感覚を隠すように、お茶を飲んだ。