「私とギンは、雨天様の神使(しんし)。……そして、雨天様は神様です」

「か、かみ、さま?」


嘘でしょう、っていう言葉は、声にならなかったかもしれない。
信じられないという気持ちは間違いなくあるのに、なぜかそう言い切れなかったから。


神様だなんて言われて素直に信じる人が、この世にどれくらいいるだろう。
少なくとも、私は少数派じゃないはず。


「えっと、コンくん……神使とか神様とか、コンくんが考えた冗談なの?」

「ひかり様、これは冗談ではないのですが……。うーん、やっぱり人間のお客様に説明するのは難しいですねぇ」


温かかったほうじ茶は、すっかり湯気を失っている。
香りも弱まっていたけれど、いつの間にか喉が渇いていたことに気づき、そっと湯呑みに口づけた。


「あ、おいしい……」

「加賀特産の棒ほうじ茶でございます」


思わず零れた素直な感想に、悩むように眉を寄せていたコンくんが嬉しそうな顔をする。
どこか得意げな笑みは、やっぱりあどけなくて子どもにしか見えなかった。

「とりあえず、そろそろ甘味ができるはずですから、話はそれをいただきながらにいたしましょう」

コンくんは、その笑顔のまま気を取り直したように提案した。