「改めまして、ひかり様。雨天様のお茶屋敷へ、ようこそお越しくださいました」

「え? あ、はい……。えっと……」


客間らしい広い部屋に通されると、一旦部屋から出て行ったコンくんはすぐに温かいほうじ茶を持って来てくれた。
九谷焼らしき湯呑みからは、お茶の香りを漂わせる優しい湯気が立っている。


「私は、コンと申します。カタカナでコンでございます。そして、さきほどの男性は雨天様です」

「ウテン様……?」

「晴天や雨天――つまり、雨の天気と書いて雨天様です」


変わった名前だということは、思っただけで口にはできなかった。
それよりも、あの風貌の方がよほど気になる。


「それから、他には私とよく似たギンという者がおります。ギンはお台所を担当しており、私はお客様をご案内するのがお役目です。ちなみに、ギンも性別で言えば私と同様ですので、ここにいる者はみな、男です」


性別のくだりは変な説明だな、と思いつつも、丁寧に教えてくれたことにお礼を言うと、コンくんは笑顔で「これも私のお仕事です」と笑った。

「コンくんって、何年生? 言葉遣いとかすごく丁寧だし、誰に教えてもらったの? 雨天……さん?」

「……〝コンくん〟ですか?」


確かめるように私の呼び方をそのまま繰り返したコンくんは、程なくしてフフッと笑った。