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翌日、昨夜からずっと台所にこもっているギンを置いて、コンとふたりで庭に出た。
降り続けていた雪は今朝になってようやくやんだが、そこかしこに雪がこんもりと積もっている。


奥にある大きな池に着くと、凍った水面を覆う雪解け水にそっと手を翳した。
そこに映っていた私とコンの顔が消え、代わりにひかりの姿が映し出される。


「あっ! 雨天様、ひかり様が映りましたよ!」

「ああ、わかっているよ」


興奮するコンが、彼女をもっと間近で見たいと言わんばかりに池を覗き込む。
その姿に、思わず小さな苦笑が零れていた。


秋頃からアルバイトとやらを始めたひかりは、老舗和菓子屋で客の対応をしていた。


『甘い物が苦手な方もいらっしゃるお宅なんだけど、手土産用になにかおすすめはあるかしら?』

『でしたら、こちらの塩大福はいかがでしょうか。求肥には砂糖がほとんど使われておらず、あんには塩が入っていて甘じょっぱいので、甘い物が苦手な方からもご好評をいただいているんです』


まだたどたどしさを残しながらも笑顔で説明する彼女に、客はにこやかな表情で相槌を打っている。
その客は、いちご大福とみかん大福とともに、塩大福も購入していった。